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カーボンオフセットcarbon offset)とは、人間の経済活動や生活などを通して「ある場所」で排出された二酸化炭素などの温室効果ガスを、植林森林保護クリーンエネルギー事業などによって「他の場所」で直接的、間接的に吸収しようとする考え方や活動の総称である。

発生してしまった二酸化炭素の量を何らかの方法で相殺し、二酸化炭素の排出を実質ゼロに近づけようという発想がこれら活動の根底には存在する。「カーボンオフセット」という用語も「二酸化炭素(カーボンダイオキサイド:carbon dioxide)を相殺する(オフセット:offset)」に由来している。

概要[]

一般にカーボンオフセットをする流れは前後を含め以下のようになる。 すなわち、

  1. 特定の活動(省エネルギー活動など)によって、排出される二酸化炭素の量を削減する努力をする
  2. その上で、やむを得ず排出される二酸化炭素の量を算出する
  3. その算出された二酸化炭素の量をオフセット(相殺)するために、植林・森林保護・クリーンエネルギー事業を実施する。

手法[]

直接的な二酸化炭素固定によるオフセット[]

植林などにより二酸化炭素を固定化する(=二酸化炭素の吸収量を増やす)。または二酸化炭素固定化技術による固定化。

間接的な二酸化炭素削減によるオフセット[]

京都議定書で定められた「クリーン開発メカニズム:clean developement mechanism(CDM)」などを通して、潜在的に二酸化炭素を多く排出する途上国設備先進国の削減技術を用いて改良し、排出する二酸化炭素の量を減らす。この減らした分の二酸化炭素の量によってオフセットを実行している。

温室効果ガス削減プロジェクト[]

温室効果ガス削減プロジェクトには直接的なもの、間接的なものがある。

また削減対象も二酸化炭素のみではなく、メタン、フロンなど他の温室効果ガスも含まれる。

温室効果ガス削減クレジットには、国連に認められたCER、第三者機関が認めたVERの2通りがあり、VERにも第三者機関ごとに様々な基準が存在することから品質に幅がある。 そのほかに、1950年以降植林のされていない新規植林、1989年以降植林されていない再植林、1990年以降、人為的活動で実施された分が、吸収源クレジットとして国連に認められている。


日本においては新エネルギーの普及を目的としたグリーン電力証書を用いてオフセットしていると公言している事業者も存在する。

グリーン電力証書は発電による環境価値を販売している。このことから二酸化炭素を排出しない発電という部分を環境価値と評価するならば、グリーン電力証書を販売した時点で、購入者の二酸化炭素排出量をグリーン電力発電事業者が排出したこととする「付け替え」になる。そのため、排出元の転換はあるものの、全体の二酸化炭素排出量自体は減っていない。

マクロ的視点で見れば、グリーン電力の普及が促進されれば日本における二酸化炭素排出抑制に貢献するという予測も可能ではあるが、あくまで「付け替え」であり「削減」ではないことから、グリーン電力証書によるカーボンオフセットについては環境省がVERとしての取り扱いについて、海外の事例、日本の既存の手法などを参考に検討を進めている*。

カーボンニュートラル・カーボンポジティブ[]

尚、カーボンオフセットを通して、二酸化炭素排出が実質ゼロになった状況をカーボンニュートラル、二酸化炭素をより多く相殺した場合をカーボンポジティブともいう。

なお、環境省の指針においては、日常生活や事業活動における排出量に対し、排出削減・吸収プロジェクトによる排出削減・吸収量、購入したクレジット量の合計が上回っている状態をカーボン・マイナスと表現している*。


歴史[]

カーボンオフセットは1997年に英国の植林NGOであったフューチャーフォレスト(現カーボンニュートラル社)という団体の取り組みから始まった*。

イギリス、アメリカ、ドイツ、オーストラリアなど、海外ではカーボンオフセットの浸透が進行しており、日本においても環境省が指針を出し、検討会を組んでいる。

日本でもコンビニエンスストア、自動車、タイルカーペット、書籍、廃棄物収集運搬にいたるまで、カーボンオフセットを適用した事業者が現れている。


プロバイダー[]

個人や企業向けに、カーボンオフセットの仕組みを提供する事業を行う団体をカーボンオフセットプロバイダーと呼ぶ。英国や米国では、企業やNPO団体など、数10社がカーボンオフセットを提供しており、ここ数年で市場が急成長している。英国においては、2006年に約500万トンCO2/年のクレジットがカーボンオフセットを目的として取引されており、世界のVERの四分の一が英国で取引されている。米国の企業向けプロバイダーの中には、地中炭素貯留(CCS)等の大規模なプロジェクトによってクレジット生成に取り組む企業も出てきている*。 日本においても複数のオフセットプロバイダーが存在し、カーボンオフセット商品の立案等のサービスを提供している。


関連項目[]

  • GHG
  • カーボンニュートラル
  • VER
  • CER
  • 植林
  • 排出権取引
  • 二酸化炭素貯留
  • 二酸化炭素固定化

参考[]