モール泉(モールせん)とは、植物起源の有機質を含んだ温泉のこと。モール温泉ともいう。モールとは、ドイツ語で湿原(Moor)のこと。昭和初期には十勝川温泉を含め世界で2箇所しかないと言われていた。しかしその後各地でモール泉が確認されている。
温泉法に基づくの療養泉の分類についての泉質とは全く別の概念である。温泉の分類上では単純温泉や塩化物泉などであり、効能などはそれぞれに準じる。
石炭の形成途上であり炭化が進んでいない泥炭や亜炭層から源泉を汲み上げるため、植物起源の有機質を多く含み、肌に触れるとツルツルとした感触があるのが特徴だが効能としては認められていない。湯色は飴 - コーラ色を呈し、透明度が極めて低い湯もある。
これらのうちの一部は、源泉が地下10m前後と極めて浅い層からでも得られること、湯温も30度前後と低いことなどから、地下に封入された化石水による温泉ではなく、自由水が泥炭中の有機物から生じる熱で暖められているのではないかという説がある。
日本のモール泉[]
- 十勝川温泉[1]
- 野付郡別海町十勝川温泉よりも総成分量が多く郊楽苑と言う入浴宿泊施設でのみ入浴できる。
- 幕別温泉
- しほろ温泉
- 帯広市中心部の銭湯の多くも、十勝川温泉とほぼ同泉質のモール温泉である。
- 東北温泉 青森県上北郡東北町の乙供駅の裏手にある東北温泉は、かなり真っ黒なモール温泉である。
- 宮城県東鳴子温泉の「赤湯共同源泉」
- 秋田県大潟村のポルダー潟の湯もモール温泉である事が判明した。
- 福島県南部一帯では、成分のほとんどがモールである単純泉が多数湧出している。
- 東京都大田区や神奈川県川崎市、横浜市にある銭湯の中には、モール成分により真っ黒となっている冷鉱泉を沸かして用いているところがある。それらは黒湯の俗称を持っている。
- 神奈川県鎌倉市の日帰り入浴施設の稲村ヶ崎温泉等、神奈川県にもモール成分により真っ黒となっている冷鉱泉を沸かして用いている温泉がある。
- 佐渡佐和田温泉 旅館入海も十勝川温泉と同泉質のモール温泉である。
- 金沢市の深谷温泉をはじめ市内温泉銭湯の多くにコーヒー色のモール成分が含まれた湯が涌き出ている。
- 周辺では白山市(旧美川町)や津幡町にも同様の湯を利用した温泉施設が存在する。
- 甲府盆地の温泉の多くにもモール成分が含まれる。
- 福岡県大川市の日帰り入浴施設・大川温泉はフルボ酸を含むモール泉として注目されている。
- 熊本県人吉市や鹿児島県湧水町、それと隣接する宮崎県えびの市にはモール成分を含む温泉が多数、湧出している
- 大分県別府市の別府温泉北浜地区の旅館群の源泉の中にはモール泉が湧き出すものがある。
- モール泉の分布は別府湾に沿って広がっており、大分市内の温泉銭湯にも多い。
- 鹿児島県の鶴丸旅館にある鶴丸温泉は九州屈指の高濃度のモール泉と言われている。
脚注[]
- ↑ 北海道のモール温泉は、北海道遺産に選定されている。