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ファイル:Cyclone Catarina from the ISS on March 26 2004.JPG

南太平洋の熱帯低気圧(2004年3月26日)

ファイル:Low pressure system over Iceland.jpg

アイスランド南西沖の寒冷低気圧(2003年9月4日)

低気圧(ていきあつ、Low pressure)とは、周囲より気圧の低い部分をいう。周囲より気圧が低いと定義されるので、中心気圧が1気圧 (1013 hPa) より高い低気圧も珍しくない。冬季にシベリア高気圧の圏内に発生する低気圧の中には 1030 hPa 以上のものもしばしば見られる。

一般に、低気圧はを伴い、をもたらす。転じて不機嫌な人を表す。

成因[]

温帯低気圧[]

詳細は「温帯低気圧」を参照

2つの気団(あるいは高気圧)が接するところには、前線ができる。この前線の両側で、それぞれの高気圧による風の風速の差が生ずる。このため前線が振動を起こし、寒気の中に暖気が入り込んだ部分では気圧が下がり、低気圧が発生する。このような成因で発生する低気圧を温帯低気圧という。温帯低気圧が発達するには、2つの高気圧の温度差が大きい、前線にうまく暖気が入り込む、などの条件が必要である。

大局的に見ると、温帯低気圧は単に高気圧間の温度差によるものではなく、高温な赤道地域と低温な極地域の気温差によって生ずるものである。赤道と極の気団を分ける「寒帯前線帯」に発生し、両気団の温度差によって発達し、結果として低緯度の高温の空気を極方面に引き上げ、高緯度の低温の空気を赤道方面に引き下ろして、地球の温度分布を均等にする効果を上げている。北半球においては寒候期には大陸と海洋の温度差が非常に大きくなるため、シベリアの東側に位置するアリューシャン列島からベーリング海にかけてと、北米大陸東側とグリーンランドの南側に当るアイスランド付近では、西或いは南西から進んできた温帯低気圧が発達しては停滞する事が繰り返され、定常的な低圧部となる。南半球では、南極周辺で同様の現象が起こるが、南極大陸は年間を通じて低温であり、周辺に目立った大陸が無いので、全域で1年中温帯低気圧の発達が著しく、南緯40度から50度付近は、航海者から「暴風圏」と呼ばれる荒天が続く。発達した温帯低気圧の規模は非常に大きくなり、1000hPaの等圧線の半径が1000kmを越える事も珍しくないが、気圧傾度は比較的ゆるいため、域内の最大風速も後に述べる熱帯低気圧ほど強くなく、40m/s以上になる事はほとんどない。

温帯低気圧による最低気圧の世界記録は、1993年1月10日、イギリスとアイスランドの間の北大西洋上で、天気図解析により決定された915hPa(あるいは912hPaとも)である。

日本に影響する低気圧は、中国東シナ海で発生し、日本列島を西南西から東北東方向に横切り、三陸沖からアリューシャン列島あたりで最盛期に達し、その後進路が不定になって停滞したりアラスカ方面に進む事が多い。また、熱帯低気圧が北上して前線が生じた上で温帯低気圧に変わることがある。ただし、逆に温帯低気圧から熱帯低気圧に変わることは無い。温帯低気圧と衰退期の熱帯低気圧とでは構造は確かに類似しているが、発生地域が異なる上、気候にも影響があるため、熱帯低気圧が温帯低気圧に変わることはあっても、温帯低気圧から熱帯低気圧に変わることは無いのである。

近年、熱帯低気圧並みの風雨をもたらす温帯低気圧が頻繁に発生するようになっている[要出典]。このように、急速に発達する温帯低気圧を爆弾低気圧という。

熱帯低気圧[]

詳細は「熱帯低気圧」を参照

熱帯の海洋上で発生する低気圧を、熱帯低気圧という。成因も構造も温帯低気圧とは異なる。

熱帯低気圧は、(1) 海水面温度が高く (26–27 ℃)、(2) 転向力のある程度大きい北緯(南緯)5–25°の範囲で発生する。

熱帯の大気は通常条件付き不安定な状態にあり、海水面温度が高い海域では蒸発が盛んに行われるため、上昇気流が起きやすい。一方、低緯度では中緯度高気圧(亜熱帯高気圧)から吹き出す貿易風が恒常的な東風となっているが、その東風の中にしばしば波動が生じる。これを偏東風波動と呼び、この部分は渦度を生じて周囲から渦状に空気が流れ込み、強い上昇気流が起きて気圧が低くなり、積雲や積乱雲が発達する。上昇気流により雲ができて水蒸気が持っていた熱が大気中に放出され、上空の空気の温度が高くなると、このサイクルがますます加速され、低気圧が発達する。(第2種条件付不安定・CISK)

北西太平洋域(北半球の東経100度~180度)において熱帯低気圧の域内最大風速が17.2 m/s(34kt) を越えると台風となる。北大西洋及び北東太平洋(北半球の西経180度以東)ではハリケーン、南北インド洋や南太平洋ではサイクロンと呼称されるが、台風と同じ熱帯低気圧である。台風がさらに発達するためには、海水温が 28 ℃以上の海域を通過することが重要だとされる。熱帯低気圧は温帯低気圧に比べて規模が小さく、1000hPaの等圧線半径も600kmを越える事は少ないが、特に中心付近で気圧傾度が大きくなっているため猛烈な暴風を伴う。

熱帯低気圧による最低気圧の世界記録は、1979年10月12日、台風第20号において沖ノ鳥島南南東海上でアメリカ軍の気象観測機により実測された870hPaである。

熱帯低気圧(台風など)が中緯度まで北上(北半球の場合)すると、寒気の影響を受け構造に変化が生じ、熱帯低気圧の東側に温暖前線、西側に寒冷前線が生じた上で温帯低気圧に変わる場合が多い。盛夏期にはそのまま衰弱し、熱帯低気圧のまま消滅することもある。

寒冷低気圧[]

詳細は「寒冷低気圧」を参照

偏西風の蛇行が激しくなると、蛇行が低緯度側へ張り出した部分(気圧の谷)が切り離されて独立した渦となることがある。この部分は極からの寒気が入り込んでいる部分であるので寒冷な低気圧となる。これが、寒冷低気圧、寒冷渦、切離低気圧(カットオフ・ロウ)、といった名で呼ばれる低気圧である。

一般に寒冷低気圧は地上天気図では明瞭ではなく前線を伴わない小低気圧として描かれるが、高層天気図においては寒気を伴う非常に顕著な渦として描かれる。

寒冷低気圧の通過の際は大気が非常に不安定となるため、積乱雲が発達して激しい雷雨や集中豪雨(冬季は大雪)をもたらすことがある。寒冷低気圧は偏西風の流れから切り離されているため動きが遅く悪天候が数日間続く。このことから「雷三日」という言い習わしがある。

冬季に発生した場合、日本海側では大雪になることがある。ごく稀に関東平野など太平洋側にもに雪をもたらすことがある。

日本周辺で夏季に発生する場合、アリューシャン列島からミッドウェイ近傍で発生した蛇行から切り離され、一週間程度で小笠原近海まで南西方向に進むケースが見られる。 これに対応して熱帯低気圧の発達が観測されることから、台風の発達との関連を指摘する研究がある[1]

熱的低気圧[]

詳細は「熱的低気圧」を参照

大陸は海洋に比べて暖まりやすいため低気圧となる(熱的低気圧)。局地的で小規模なものは海陸風の原動力となり、大陸規模のものはモンスーンの原動力となる。

地形性低気圧[]

詳細は「地形性低気圧」を参照

台風や強大な温帯低気圧が山脈や大きな島を横断する場合、或いは広範囲に強い風が吹走して同様の地形にぶつかった場合など、風の流れが一部分切り離されて渦となり、小さな低気圧として認められる場合がある(地形性低気圧)。

極低気圧[]

詳細は「極低気圧」を参照

極気団の内部で発生する低気圧を極低気圧という。冬の日本海(特に秋田沖付近)でも発生することがある。発生の要因は、条件付不安定、順圧不安定、傾圧不安定などである。寒冷低気圧の小型版との見方もある。

爆弾低気圧[]

爆弾低気圧とは、急速に発達し、熱帯低気圧並みの風雨をもたらす温帯低気圧をいう。世界気象機関の定義によれば低気圧の緯度を φ とし、24時間で 24×(sin φ/sin 60°) hPa 以上の中心気圧の低下が見られたものをいう。日本付近は世界の中で爆弾低気圧の発生がもっともよく見られる地域である。一部のマスコミではこの表現を使用しているが、気象予報用語としては使用しない用語とされている(「台風並みの低気圧」と言う表現も同様)。このため、日本の気象庁では、「急速に発達する低気圧」と表現している(これは、気象予報用語としての扱い)。

名称[]

2002年ドイツのベルリン自由大学気象研究所が、高気圧や低気圧の命名権の販売を開始した。徳島県徳島市在住の団体職員兼気象予報士の男性が、日本人として初めて購入した。購入者は自分自身の名を低気圧に命名し、2005年秋、日本人名をつけた史上初の低気圧「タカシ (TAKASHI)」が誕生した。

脚注[]

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関連項目[]

ウィキメディア・コモンズ
  • 高気圧


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