十勝沖地震(とかちおきじしん)は、北海道の十勝地方の沖合を震源として起こる地震。
過去に数回発生しているので、発生年を付して「N年十勝沖地震」と呼んで区別される。
発生要因[]
北海道十勝沖からロシア連邦のカムチャツカ半島沖にかけて千島海溝が存在しているが、この海溝では太平洋プレートが北アメリカプレートの下に年間数cmの速度で沈み込んでいる。このため両プレートの境界で歪みが発生し、その歪みの開放により発生する逆断層型地震である。想定Mは8前後、発生間隔は約60年~80年と言われている。
震源域の静穏化現象[]
1952年十勝沖地震の7年ほど前から震源域付近では小さな地震が低下していた現象がおきていた。また2003年十勝沖地震の際も1990年以降同様の現象がおきていたことが研究者より指摘されていた[1]。
1915年[]
テンプレート:節スタブ
1952年[]
概要[]
本震[]
- 発生:1952年(昭和27年)3月4日午前10時22分44秒(日本時間)
- 震源:北海道襟裳岬東方沖約50km 北緯41度42.3分、東経144度9分、深さ54km
- 地震の規模:M8.2
- 最大震度:震度6
- 北海道池田町、浦幌村(現・浦幌町)
20世紀以降、日本近海で発生した地震としては、北海道東方沖地震と共に、最大規模である。
被害[]
北海道から東北北部で揺れや津波などの被害があり、28人が死亡、5人が行方不明、287人が重軽傷を負った。また、家屋被害は、全壊815棟、半壊1324棟、一部損壊6395棟、流失91棟、浸水328棟、焼失20棟、非住家被害1621棟であった。このほか、船舶被害451隻を出した。
北海道東部の厚岸郡浜中町の中心部霧多布地区では津波により家屋が大多数流出し壊滅した。この時期の流氷及び海氷が津波により押し寄せ,家屋の破壊が甚大になったと考えられている。この地区は8年後の1960年チリ地震津波でも街が壊滅し、死者11名を出す被害を繰り返す事になる。
津波は、厚岸湾が最高で6.5m、青森県八戸市で2mなど。津波警報制度発足後、最初の大津波だった。ただ、前日の3月3日が1933年に起こった昭和三陸地震記念日で警報伝達訓練や避難訓練も多数行われ、防災に大変役立った。
1968年[]
概要[]
この地震の発生メカニズムは前述の発生要因と異なり、地震調査研究推進本部の分類では「三陸沖北部地震」に該当する。
本震[]
- 発生:1968年(昭和43年)5月16日午前9時48分53秒(日本時間)
- 震源:北海道襟裳岬東南東沖120km 北緯40度44分、東経143度35分、深さ0km
- 地震の規模:M7.9(Mw8.3)
- 最大震度:震度5
- 北海道:函館市、苫小牧市、浦河町、広尾町
- 青森県:青森市、八戸市、むつ市
- 岩手県:盛岡市
この地震の震源は、1994年に発生した三陸はるか沖地震の北東にあたり、本来であれば『三陸沖地震(または三陸はるか沖地震)』と命名されるべきものだったが、津波警報の発令の際に震源を十勝沖として発表されたため、そのまま流用されて『十勝沖地震』と命名されている。
最大余震[]
- 発生:1968年(昭和43年)5月16日午後7時39分01秒(日本時間)
- 震源:青森県東方沖 北緯41度25分、東経142度51分、深さ40km
- 地震の規模:M7.5
- 最大震度:震度5
- 北海道:浦河町、広尾町
被害[]
北海道から東北北部で揺れや津波の被害があり、52人が死亡、330人が重軽傷を負った。また住宅被害は全壊673棟、半壊3,004棟、一部損壊15,697棟にのぼった。特に青森県は、死者・行方不明者48名、建物全壊646棟、半壊2,885棟、一部損壊14,705棟と被害が集中し、青森市や、八戸市・十和田市・むつ市・三沢市をはじめとする県東部に大きな被害をもたらした。県内の被害が大きかった地域では、前日まで3日間の総雨量が100〜200mmに及んでいたことから地盤の含水量の増加が原因とみられる地すべり・山崩れ・がけ崩れ等の地盤崩壊が24箇所で発生しており、名川町立剣吉中学校では本震発生後の避難中に生徒約40名が校舎裏の山崩れに巻き込まれ生徒4名が犠牲となるなど、県内の死者・行方不明者のうち33名が地盤崩壊によるものだった。また、むつ市早掛沼では堤防が決壊・流出し周辺が冠水したのをはじめ、主に盛土構造の崩壊とみられる道路損壊375箇所、鉄軌道被害34箇所、堤防決壊34箇所が県内で発生した。
津波は、三陸沿岸の一部で3〜5m、襟裳岬で3mを記録し、建物浸水529棟、船舶沈没・流出127隻の被害が発生、八戸港内ではタンカー損傷による燃料流出事故も生じたが、干潮時だったことが幸いし、また昭和三陸地震やチリ地震の津波を教訓とした施設整備等もあって、被害はそれほど大きくならなかった。
この地震により、十和田湖の名勝であった蝋燭岩が倒壊したり、南部鉄道が廃止に追い込まれることとなったほか、函館大学や三沢商業高等学校、八戸東高等学校、八戸工業高等専門学校、むつ市役所庁舎の倒壊(圧壊)をはじめ昭和30年代後半から建てられ始めた比較的新しい鉄筋コンクリート造の公共建築物の被害が目立った。この地震を契機に、1971年には「建築基準法施行令」の改正及び「日本建築学会鉄筋コンクリート構造計算規準」の改定がなされている。
また、激震で本州と北海道を結ぶ海底通信ケーブルが切断され通信が途絶、北海道は一時孤立状態になった。また放送用のマイクロウェーブ回線も青森県で途切れ、北海道の局に東京や大阪からVTRが空輸される事態となった。これを教訓に災害時応急復旧用無線電話・孤立化防止用無線電話が開発配備されている。
2003年[]
平成15年(2003年)十勝沖地震 | |
---|---|
[[File:テンプレート:Location map Japan|250px|十勝沖地震の位置(テンプレート:Location map Japan内)]] <div style="position: absolute; z-index: 2; top: 構文エラー: 認識できない区切り文字「[」です。%; left: 構文エラー: 認識できない区切り文字「[」です。%; height: 0; width: 0; margin: 0; padding: 0;"> | |
本震 | |
発生日 | 2003年(平成15年)9月26日 |
発生時刻 | 4時50分07秒(JST) |
震央 |
日本の旗 日本 北海道襟裳岬南東沖80km 北緯41度46.7分 東経144度4.7分(地図) |
震源の深さ | 45km |
規模 | マグニチュード(M) 8.0 |
最大震度 | 震度6弱:北海道 新冠町、静内町、浦河町など |
津波 | 2m55cm:北海道 豊頃町 |
地震の種類 | 海溝型地震 |
余震 | |
最大余震 |
同日 午前6時08分 M7.1 震度6弱:浦河町 |
被害 | |
死傷者数 | 死者:1人 行方不明者:1人 |
被害地域 | 北海道 |
* 特に注記が無い場合は気象庁による。 |
概要[]
本震[]
- 発生:2003年(平成15年)9月26日(金)午前4時50分07秒(日本時間)
- 震源:北海道襟裳岬東南東沖80km 北緯41度46.7分、東経144度4.7分、深さ45km。 震源は1952年の地震とほぼ同じ
- 地震の規模:M8.0(なお、モーメントマグニチュード(Mw)は8.3)
- 最大震度:震度6弱
- 北海道:新冠町、静内町、浦河町、鹿追町、幕別町、豊頃町、忠類村、釧路町、厚岸町
気象庁はこの地震を平成15年(2003年)十勝沖地震と命名した。
この地震の震源付近では1952年3月4日にM8.2の十勝沖地震が発生している。
本震の各地の震度[]
震度 | 観測地点 |
---|---|
震度6弱 | 北海道:新冠町、静内町、浦河町、鹿追町、幕別町、豊頃町、忠類村、釧路町、厚岸町 |
震度5強 | 北海道:厚真町、足寄町、帯広市、本別町、更別村、広尾町、弟子屈町、釧路市、音別町、別海町 |
震度5弱 | 北海道:新篠津村、栗沢町、南幌町、空知長沼町、栗山町、中富良野町、清里町、北見市、訓子府町、苫小牧市、上士幌町、音更町、十勝清水町、芽室町 |
震度4 | 北海道:石狩市、札幌中央区、札幌白石区、千歳市、恵庭市、函館市、上磯町、恵山町、南茅部町、砂原町、渡島森町、知内町、上ノ国町、厚沢部町、北檜山町、小樽市、余市町、真狩村、倶知安町、妹背牛町、秩父別町、北竜町、滝川市、砂川市、奈井江町、浦臼町、新十津川町、雨竜町、岩見沢市、美唄市、三笠市、剣淵町、旭川市、富良野市、上富良野町、南富良野町、東藻琴村、女満別町、美幌町、斜里町、端野町、留辺蘂町、生田原町、丸瀬布町、胆振伊達市、虻田町、洞爺村、白老町、平取町、えりも町、中標津町、羅臼町、根室市
青森県:青森市、五所川原市、平内町、蟹田町、今別町、蓬田村、平舘村、木造町、柏村、稲垣村、車力村、浪岡町、板柳町、金木町、小泊村、藤崎町、尾上町、常盤村、田舎館村、十和田市、三沢市、野辺地町、七戸町、百石町、六戸町、横浜町、上北町、東北町、天間林村、下田町、六ヶ所村、五戸町、名川町、階上町、福地村、青森南郷村、倉石村、むつ市、青森川内町、大間町、東通村 岩手県:軽米町、大野村、二戸市、浄法寺町、矢巾町 宮城県:迫町 |
最大余震[]
- 発生:2003年(平成15年)9月26日午前6時08分02秒(日本時間)
- 震源:十勝沖 北緯41度42.5分、東経143度41.4分、深さ21km
- 地震の規模:M7.1
- 最大震度:震度6弱
- 北海道:浦河町
最大余震の各地の震度[]
震度 | 観測地点 |
---|---|
震度6弱 | 北海道:浦河町 |
震度5強 | 北海道:新冠町 |
震度5弱 | 北海道:厚真町 静内町
青森県:野辺地町 むつ市 東通村 |
震度4 | 北海道:石狩市、新篠津村、札幌中央区、札幌白石区、江別市、千歳市、恵庭市、函館市、上磯町、恵山町、南茅部町、砂原町、知内町、厚沢部町、小樽市、滝川市、砂川市、奈井江町、新十津川町、岩見沢市、美唄市、三笠市、栗沢町、南幌町、空知長沼町、栗山町、中富良野町、伊達市、虻田町、苫小牧市、白老町、えりも町、鹿追町、帯広市、音更町、十勝清水町、芽室町、幕別町、豊頃町、更別村、忠類村、広尾町
青森県:青森市 岩手県:軽米町、大野村、二戸市、玉山村、浄法寺町、矢巾町 |
被害[]
北海道から東北地方の太平洋沿岸に津波が襲来し、最高で2m55cm(北海道豊頃町・大津で記録)に達した。この津波で、北海道では釣り人2名が行方不明となり、うち1名の遺体が2005年に発見された。また北海道(十勝川など)では、津波が川を10km以上も逆流する現象も発生した。津波による行方不明者の他には今回の地震による犠牲者はいない。この地震で政府は地震が発生した当日に官邸内に対策室を設置し、また北海道は陸上自衛隊第5師団に災害派遣を要請するなどして対応した。
北海道東部(道東)の各地方都市を結ぶ鉄道・道路・橋梁が各地で多数破損した為に一時道東地方の交通は全面ストップし、その後、主要道路の通行止め解除には数日、完全な復旧には数ヶ月を要した。また町村道のような末端の生活道路は補修に数年要した。
鉄道に関しては、根室本線直別駅構内を走行中の特急まりも(8両編成)の先頭から2両目の車両が脱線し、乗客39名のうち1名が軽傷を負った、また、同本線の路盤・橋梁・信号施設、駅舎なども破損などの被害が生じ、ダイヤが正常に戻ったのは翌月8日に入ってからであった。
また港湾施設の被害は大きく、釧路港などでは液状化現象が多数発生した。釧路空港は管制塔の天井部分が壊れるなどして管制業務が出来なくなったため閉鎖された。ライフラインでは、厚真町の苫東厚真火力発電所4号機(出力70万kw)が地震により自動停止して発電や送電設備に影響が出て、日高・十勝地方を中心に、釧路市と周辺6町の約2万4300世帯などが停電した。
また、地震直後及び2日後に苫小牧市にある出光興産北海道製油所で石油タンクの火災があった。これは、震源からやってきて苫小牧市周辺の堆積平野で増幅された長周期地震動の周期と石油タンクの固有周期が一致し、石油タンクの内容物が共振するスロッシングと呼ばれる現象が発生し、浮き蓋の上に溢れ出した重油やナフサが浮き蓋と側壁の接触により発生した火花に触れて引火することによって引き起こされた。地震後、このような巨大地震によってもたらされる長周期地震動による大規模構造物の被害が注目された。
2008年[]
概要[]
本震[]
- 発生:2008年9月11日午前9時21分(日本時間)
- 震源:北海道襟裳岬東南東沖(北緯 41.50°東経 144.4°)、深さ 20km
- 地震の規模:M 7.1
- 最大震度5弱(暫定値)
- 津波注意報:北海道太平洋沿岸東部、北海道太平洋沿岸中部、9月11日 10時45分 解除
本震の各地の震度[]
震度 | 観測地点 |
---|---|
震度5弱 | 北海道:新冠町、新ひだか町 浦幌町、十勝大樹町 |
震度4 | 北海道:南幌町、長沼町、厚真町、むかわ町、浦河町、様似町、えりも町、帯広市、音更町、幕別町、十勝池田町、豊頃町、中札内村、更別村、広尾町、釧路市、白糠町 |
震度3 | 北海道:石狩市、当別町、新十津川町、札幌北区、江別市、千歳市、恵庭市、北広島市
青森県:青森市、つがる市、野辺地町、七戸町、東北町、むつ市、大間町、東通村 岩手県:盛岡市、矢巾町 |
脚注[]
- ↑ http://www.kagakunavi.jp/document/show/53/documents 予測されていた十勝沖地震
関連項目[]
- 地震の年表
- 新冠泥火山
- 浜中町
- 潮風の診療所〜岬のドクター奮戦記〜 十勝沖地震津波被害の街へ復興のため派遣される医師と被災住民の実話をドラマ化。(派遣された医師もその後の津波により被災する)
外部リンク[]
- 気象庁/「平成15年(2003年)十勝沖地震」に関する各種資料等
- 2003年十勝沖地震における空港ターミナルビル等の天井の被害に関する現地調査報告
- 2003/09/26 十勝沖地震 特集ページ 東京大学地震研究所
- 昭和43年(1968年)十勝沖地震 青森県
- 十勝沖を震源とする地震(最終報) 総務省消防庁
テンプレート:日本近代地震