噴火警報(ふんかけいほう)とは、日本において、火山の噴火による災害に注意を呼びかけるために発表する警報および注意報。国内すべての火山を対象として、気象庁が2007年(平成19年)12月1日から発表を開始した。
噴火警報は火山によって、居住地域を含めた広域に対する警報と、火口周辺に対する警報、火山の周辺海域に対する警報に細かく分かれている。また、噴火警報の前段階として噴火予報がある。
噴火警報の発表以前は、「緊急火山情報」「臨時火山情報」「火山観測情報」の3種類の情報を発表する体制となっていた。これらは気象業務法で定められた「警報」「注意報」ではなく、あくまで防災上の注意事項という扱いであった。しかし、防災上の必要性から2007年に法律が改正され、噴火警報へと切り替えられると同時に「警報」「注意報」の扱いとなった。
噴火警報・噴火予報の区分と発令基準[]
2~3段階あり、それぞれの段階は気象庁が発表する噴火予報や噴火警報と対応している。噴火警戒レベルの導入の有無、海底火山であるかどうかによって異なる。
噴火警戒レベルが導入されている火山[]
呼称 | 厳密な呼称 | 対応する噴火警戒レベルと呼称 | 対象範囲 | 火山活動 | 避難など |
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噴火警報 | 噴火警報(居住地域) 略称:噴火警報 | レベル5 避難 |
火口を中心とし、居住地域を含む広い地域 | 居住地域に重大な被害をもたらす火山活動(噴火)が発生した、あるいはその恐れが高く切迫した状態にある。 | 危険な地域ではすべての住民が避難する。 |
レベル4 避難準備 |
居住地域に重大な被害をもたらす火山活動(噴火)が発生すると予想され、その恐れが高まっている。 | 災害時要援護者は避難する。危険な地域ではほかの住民も避難の準備を行う。 | |||
噴火警報(火口周辺) 略称:火口周辺警報 | レベル3 入山規制 |
火口内、および居住地域に近い場所も含む火口周辺部 | 生命に危険を及ぼす火山活動(噴火)が発生し、居住地域の近くにも及んだ、あるいはその恐れがある。 | 状況に応じて、登山禁止や入山規制などが行われる。災害時要援護者の避難準備が行われる場合もある。 | |
レベル2 火口周辺規制 | 火口内から火口周辺部まで | 火口内や火口の周辺部で、生命に危険を及ぼす火山活動(噴火)が発生した、あるいはその恐れがある。 | 火口周辺は立ち入りが規制される。 | ||
噴火予報 | レベル1 平常 |
火口内 | 火山活動はほぼ静穏だが、火山灰を噴出するなど活動状態が変化することもある。火口内では生命に危険が及ぶ可能性がある。 | 火口内では立ち入りの規制をする場合がある。 |
噴火警戒レベルが導入されていない陸上の火山[]
呼称 | 厳密な呼称 | 警戒事項と呼称 | 対象範囲 | 火山活動 |
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噴火警報 | 噴火警報(居住地域)※ 略称:噴火警報 | 居住地域厳重警戒※ | 火口を中心とし、居住地域または山麓を含む広い地域 | 居住地域に重大な被害をもたらす火山活動(噴火)が発生した、あるいはその恐れがある。 |
噴火警報(火口周辺) 略称:火口周辺警報 | 入山危険 | 火口内、および居住地域に近い場所も含む火口周辺部 | 生命に危険を及ぼす火山活動(噴火)が発生し、居住地域または山麓の近くにも及んだ、あるいはその恐れがある。 | |
火口周辺危険 | 火口内から火口周辺部まで | 火口内や火口の周辺部で、生命に危険を及ぼす火山活動(噴火)が発生した、あるいはその恐れがある。 | ||
噴火予報 | 平常 | 火口内 | 火山活動はほぼ静穏だが、火山灰を噴出するなど活動状態が変化することもある。火口内では生命に危険が及ぶ可能性がある。 |
※居住地域が不明確な場合は、警報の呼称を「噴火警報(山麓)」、警戒事項等を「山麓厳重警戒」とする。
噴火警戒レベルが導入されていない海底火山[]
呼称 | 厳密な呼称 | 警戒事項と呼称 | 対象範囲 | 火山活動 |
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噴火警報 | 噴火警報(周辺海域) | 周辺海域警戒 | 周辺海域 | 海底火山やその周辺海域に重大な影響をもたらす火山活動(噴火)が発生した、あるいはその恐れがある。 |
噴火予報 | 平常 | 火山の真上 | 火山活動はほぼ静穏だが、海水の変色が見られるなど活動状態が変化することもある。 |
噴火警報・噴火予報の意味と防災[]
噴火警報の発表以前は、災害の危険性や情報の意味を分かりやすくするため、おおむね「緊急火山情報」が警報、「臨時火山情報」が注意報、「火山観測情報」が危険度が低い場合の情報という具合で扱われてきた。しかし、情報の分かりにくさは残っていたため「緊急-」と「臨時-」の混同が起きていた。また、噴火予知の精度が低かったため、噴火と情報発表のタイミングがまちまちとなり、避難の開始や立入禁止の設定などが早過ぎたり遅過ぎたりという例が発生していた。2000年の有珠山噴火のように「緊急火山情報」で的確に避難が行われた例もあれば、同年の三宅島・雄山噴火のように「緊急火山情報」が早くから出されながらも大きな噴火が起きず、一方で災害の発生する恐れがあるような活動の際に「緊急火山情報」が出されなかった例もあった。
こういったことから、既存の情報体制に対する非難が強くなり、減災を目指して新しい情報体制を構築することとなった。
現在の噴火警報・噴火予報は、気象業務法が規定する「警報」「注意報」「予報」と明瞭に対応している。噴火警報は「警報」、噴火予報は「予報」に当たる。「注意報」に関しては、現在の科学では、注意報を発表するにふさわしい状況と警報を発表するにふさわしい状況を区別することが難しい(=事例によって可能・不可能がある)ことから、注意報を発表するにふさわしい状況でも即「警報」となり、噴火警報がその役割を全てカバーしている。
参考文献[]
外部リンク[]
- 噴火予報・警報 気象庁
関連項目[]
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