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様々な地熱エネルギー

テンプレート:再生可能エネルギー 地熱発電(ちねつはつでん、じねつはつでん、Geothermal power)とは、地熱(主に火山活動による)を用いて行う発電のことである。再生可能エネルギーの一種であり、枯渇性エネルギーの価格高騰や地球温暖化の対策手法としても利用拡大が図られつつある。

概要[]

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アイスランドレイキャビク近郊に立地する同国最大の地熱発電所、Nesjavellir発電所

地熱によって生成された天然の水蒸気ボーリングによって取り出し(最初から蒸気の場合と、高温・高圧の熱水を減圧沸騰させて蒸気を得る場合がある)、その蒸気により蒸気タービンを回して機械的エネルギーに変換し、発電機を駆動して電気を得る[1]

地熱発電は探査・開発に比較的長期間を要し、探査した結果地熱利用がかなわない場合もあり、火山性の自然災害に遭遇しやすいリスクもある。しかし燃料を必要とせず、環境に優しく、燃料の枯渇や高騰の心配が無い点で、すぐれたエネルギー源とされる。また再生可能エネルギー(自然エネルギー)の中でも、需要に応じて安定した発電量を得られる地熱発電はベースロード電源として利用が可能である点において、出力が不随意に変動する太陽光発電風力発電とは異なった長所を有する。地球全体でみた資源量も大きく(再生可能エネルギー#資源量を参照)、特に日本のような火山国においては大きなポテンシャルを有すると言われる[2][3]。近年の枯渇性燃料の高騰によってコスト的にも競争力が増し、見直されつつある(下記)。

方式[]

現在利用されている地熱発電では、主にドライスチーム、フラッシュサイクル、バイナリーサイクルの3つの方式が用いられている[4][5][6]。この他、熱水・蒸気資源が無くても発電できる高温岩体発電や、温泉水を利用する温泉水温度差発電等がある。

ドライスチーム[]

蒸気発電を行う場合、蒸気井から得られた蒸気が殆ど熱水を含まなければ、簡単な湿分除去を行うのみで蒸気タービンに送って発電することが可能であり、これをドライスチーム(dry steam)式と呼ぶ[5]。日本での実施例に松川地熱発電所や八丈島発電所などがある。

フラッシュサイクル[]

得られた蒸気に多くの熱水が含まれている場合、蒸気タービンに送る前に汽水分離器で蒸気のみを取り分ける必要がある。これをシングルフラッシュサイクルという[7]。日本の地熱発電所では主流の方式である[4]

蒸気を分離した後の熱水を減圧すれば、更に蒸気が得られる。この蒸気をタービンに投入すれば、設備は複雑となるが、出力の向上及び地熱エネルギーの有効利用が可能となる。これをダブルフラッシュサイクルという[4]。日本では八丁原発電所及び森発電所で採用されている。

更に、ダブルフラッシュサイクルで蒸気を取り出した後の熱水を更に減圧して蒸気を取り出すトリプルフラッシュサイクルも存在する。ダブルフラッシュサイクルよりも設備は更に複雑となるが、出力の向上に伴うメリットは小さく、ニュージーランドなどに少数の例があるのみである。

バイナリーサイクル[]

地下の温度や圧力が低く熱水しか得られない場合でも、アンモニアペンタンフロンなど水よりも低沸点の媒体(これを低沸点流体という)を、熱水で沸騰させタービンを回して発電させることができる場合がある。これをバイナリー発電(binary cycle)という[4]。日本ではイスラエルのオーマット社製のペンタンを利用した発電設備が八丁原発電所で採用されている。

高温岩体発電[]

天然の熱水や蒸気が乏しくても、地下に高温の岩体が存在する箇所を水圧破砕し、水を送り込んで蒸気や熱水を得る高温岩体発電(hot dry rock geothermal power; HDR)の技術も開発されている[8]。地熱利用の機会を拡大する技術として期待されている[2]。 既存の温水資源を利用せず温泉などとも競合しにくい技術とされ、38GW以上(大型発電所40基弱に相当)におよぶ資源量が国内で利用可能と見られている[2]。多くの技術開発は済んでいるとされ、また現在の技術ならばコストも9.0円/kWhまで低減する可能性が指摘されている[2]

温泉水温度差発電[]

比較的高温(例えば70~120℃)の温泉の熱を浴用等に適した50℃程度の温度に下げる際、余剰の熱エネルギーを利用して発電する方式である[4][9]。温泉発電とも呼ばれる。

マグマ発電[]

さらに将来の構想として、マグマだまり近傍の高熱を利用するマグマ発電の検討が行われている。開発に少なくとも50年はかかると言われる[10]が、潜在資源量は60億kW(6000GW)におよぶ[2]と見積もられ、これを用いると日本の全電力需要の3倍近くを賄えるだろうと言われている[10]

技術[]

井戸[]

蒸気を採取するための坑井(蒸気井)の深さは、地下の構造や水分量などによって異なり、数10mから3,000mを超えるものまでさまざまである[11]。通常は1km以上3km以下である[12]

蒸気発電およびバイナリー発電では、発電に使った蒸気(復水器で凝縮されて水になる)や余った熱水を地表に放出・放流させると地下の蒸気や熱水が枯渇してしまうおそれがある。また、熱水に含まれる金属などの成分が、河川や湖沼の水質に影響を与えることも懸念される。そのため、発電に使用した後の蒸気や熱水は坑井(井戸)を通じて地下に戻すことが行われる。これを還元という。還元用の井戸(還元井、かんげんせい)は蒸気井よりも浅いことが多い。還元井は当初から還元井として掘削される他に、勢いの衰えた蒸気井が転用されることもある。

一方、還元する量が多すぎたり場所が悪かったりすると、地中の温度を下げたり、地中の蒸気や熱水の流れを乱してしまい、発電に利用可能な蒸気や熱水が得られなくなることがあるため、還元の際は適切な場所や量を選定する必要がある。

貯留層管理[]

蒸気や熱水が溜まっている地中の部位は貯留層と呼ばれるが、貯留層の温度や水分を維持するために蒸気の利用や還元を計画・実施することを、貯留層管理という。貯留層管理は、地熱資源を持続的に利用するために重要な技術である。

環境影響[]

環境性能[]

地熱発電は地熱のエネルギーを利用して発電し、発電時に化石燃料を燃焼させる必要が無い。このため発電量あたりのCO2排出量が低く、建設等に要したエネルギーも通常1年程度で回収できる[13][14]

地震の誘発[]

地下との熱水の出入りにより微小な地震が発生することがあるが、通常は高感度な地震計でしか感知できないような無感地震である[15]。また、大規模な地震を誘発させた例もない[15]

歴史と現状[]

1904年イタリアラルデレロにつくられたものが世界で最初の地熱発電所である。 2003年末の世界の地熱発電設備容量の合計は8,402MWである。国別首位はアメリカ合衆国(2,020MW)で、このうち約9割がカリフォルニア州に集中している。他にネバダ州ユタ州ハワイ州で地熱発電が行われているが、エネルギー省では西部・南部の州で地熱エネルギー開発を進め、2006年までには地熱発電所のある州を8州にまで増やす計画である。アメリカに次いで発電容量が多いのは火山国フィリピン(1,931MW)。フィリピンは国内総発電量の約4分の1を地熱でまかなう「地熱発電大国」である。

日本における地熱発電[]

日本では1919年に海軍中将・山内万寿治が大分県別府で地熱用噴気孔の掘削に成功、これを引き継いだ東京電灯研究所長・太刀川平治が1925年に出力1.12kWの実験発電に成功したのが最初の地熱発電とされる[16]。実用地熱発電所は岩手県八幡平市松川地熱発電所日本重化学工業株式会社)が1966年10月8日に運転を開始したのが最初である。

地熱発電は石油などの化石燃料を使わないクリーンエネルギーであり、石油に匹敵する貴重なエネルギーを国産で採掘できることから、原油価格の変動リスクがない国産エネルギーとして、見直しが進められている[17]。費用対効果も向上しており、近年の実績で8.3円/kWhの発電コストが報告されている[18]

日本は火山が多く地熱開発の技術水準も高く、地熱発電の総容量はおよそ535MWで世界第6位である。しかしこれでも国内発電能力の0.2%に過ぎない。日本で地熱発電が積極的に推進されにくい理由は、地域住民の反対や法律上の規制があるためである。候補地となりうる場所の多くが国立公園国定公園に指定されていたり、温泉観光地となっていたりするため、景観を損なう発電所建設に理解を得にくいこと、温泉への影響に対する懸念があること、国立公園等の開発に関する規制があることが地熱発電所の設置を難しくしている。例えば、群馬県嬬恋村では2008年に地熱発電の計画が浮上したが、その予定地が草津温泉の源泉から数kmしか離れていないため、温泉に影響が出る可能性があるとして草津町が反対している[19]

既存方式と合わせて国内電力の最大3割程度を賄える可能性があり、太陽光発電風力発電に加えて地熱発電の開発も進めるべきだ、との指摘がなされている[10]。2009年1月には、20年ぶりに国内で地熱発電所を新設する計画が発表されている[20]

行政も、2008年には経済産業省で地熱発電に関する研究会を発足したり[21][22][23][24]、2010年度には、地熱発電の開発費用に対する国から事業主への補助金を、2割から3分の1程度にまで引き上げることを検討するなど[25]、地熱発電の促進が積極化している。

日本の地熱発電所[]

ファイル:Plant YanaduNishiyama 01.jpg

柳津西山地熱発電所

立地上、火山の多い東北地方九州地方の一部に集中している。 北海道電力、九州電力の発電所名には地熱がつかない。

発電所名 発電会社 容量
(MW)
所在地
森発電所 北海道電力 50 北海道
大沼地熱発電所* 三菱マテリアル 9.5 秋田県
澄川地熱発電所 東北電力 50
上の岱地熱発電所 東北電力 28.8
松川地熱発電所* 東北水力地熱 23.5 岩手県
葛根田地熱発電所 東北電力 80
鬼首地熱発電所 電源開発 12.5 宮城県
柳津西山地熱発電所 東北電力 65 福島県
八丈島地熱発電所 東京電力 3.3 東京都
岳の湯発電所* 廣瀬商事 0.05 熊本県
大岳発電所 九州電力 12.5 大分県
八丁原発電所 九州電力 112
杉乃井地熱発電所* 杉乃井ホテル 1.9
滝上発電所 九州電力 25
九重地熱発電所* 九重観光ホテル 1
霧島国際ホテル地熱発電所* 大和紡観光 0.2 鹿児島県
大霧発電所 九州電力 30
山川発電所 九州電力 30
合計 535.2

*)は自家用発電所

世界の地熱発電[]

  • 順位は地熱発電容量計
国名 地熱発電容量計(MW) 総電力設備容量(MW) 地熱発電割合(%)
アメリカ合衆国 2,534.1 10,310,692 0.2
フィリピン 1,930.8 13,434 14.4
メキシコ 953.0 43,536 2.2
インドネシア 797.0 124,706 3.2
イタリア 790.5 78,249 1.0
日本 535.0 272,701 0.2
ニュージーランド 435.5 8,555 5.1
アイスランド 172.1 1,510 11.4
コスタリカ 162.5 1,715 9.5
エルサルバドル 151.0 1,133 13.3
ケニア 127.0 1,129 11.2
グアテマラ 127.0 1,697 1.9
ロシア 79.0 216 0.0
ニカラグア 77.5 641 12.2
中国 28.8 391,408 0.0
トルコ 20.4 28,332 0.1
ポルトガル 16.0 11,240 0.1
フランス 14.7 115,975 0.0
エチオピア 7.0 501 1.4
パプアニューギニア 6.0 --- ---
台湾 3.3 34.598 0.0
ギリシャ 2.0 11,360 0.0
オーストリア 1.2 18,030 0.0
タイ 0.3 50,532 0.0
オーストラリア 0.2 44,852 0.0
  • 地熱発電の基礎知識(4)
  • データは社団法人 火力原子力発電技術協会『地熱発電の現状と動向』2007年版から引用
  • 「地熱発電割合」は、「地熱発電容量計」を「総電力設備容量」で割ったもの。

関連公的団体[]

参考資料[]

  1. 地熱発電とは? 2.地熱発電のしくみ
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 電中研レビューNo.49 未利用地熱資源の開発に向けて -高温岩体発電への取り組み-
  3. Feed-In Tariffs: Accelerating the Deplyment of Renewable Energy, Miguel Mendonca, World Future Council, ISBN 978-1-84407-466-2
  4. 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化に向けた提言、低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化検討会、平成22年3月
  5. 5.0 5.1 DOE, EERE, Geothermal Technologies Program, Hydrothermal Power Systems
  6. Idaho National Laboratory, What is geothermal energy?
  7. 地熱発電のしくみとCO2 削減,三菱重工技報 VOL.45 NO.1: 2008
  8. 地熱エネルギー入門(Mary H. Dickson, Mario Fanelli著、地熱学会訳)
  9. 自然冷媒アンモニアによる温泉水温度差発電システム
  10. 10.0 10.1 10.2 「日本はもっと地熱発電を 米国の環境学者 レスター・ブラウン氏提言」『中日新聞』2008年6月23日 2008年6月24日にWebアーカイブ 2009-10-29閲覧
  11. Annual Report on Geothermal Energy Development in Japan - 2002 -
  12. Fridleifsson, I.B., R. Bertani, E. Huenges, J. W. Lund, A. Ragnarsson, and L. Rybach 2008. The possible role and contribution of geothermal energy to the mitigation of climate change. In: O. Hohmeyer and T. Trittin (Eds.) IPCC Scoping Meeting on Renewable Energy Sources, Proceedings, Luebeck, Germany, 20-25 January 2008, 59-80.
  13. 地熱発電について、資源エネルギー庁・地熱発電に関する研究会における検討、資料6-1
  14. 再生可能エネルギー源の性能、産業技術総合研究所
  15. 15.0 15.1 地熱学会、地熱エネルギー入門 環境影響、2010年12月閲覧
  16. 今日新聞 2005年5月6日記事「坊主地獄そばで日本初の地熱発電
  17. Gooニュース 2007年12月20日の記事(経産省が新エネルギーに小水力と地熱を追加)
  18. NEDO, 「需要に応じた電源開発の着実な推進」平成17年度 事業原簿(ファクトシート)、平成18年9月
  19. 毎日新聞、2008年6月19日の記事(財政再建を願う嬬恋村が発電所建設を求めるも、温泉を擁する草津町が反対)
  20. 地熱発電所、三菱マテなど20年ぶり新設 政府、春に支援策、Nikkei.net、2009年1月2日
  21. 経済産業省、地熱発電に関する研究会(第1回)-配付資料
  22. 経済産業省、地熱発電に関する研究会議事要旨(第1回)-議事要旨
  23. 経済産業省、地熱発電に関する研究会(第2回)-配付資料
  24. 経済産業省、地熱発電に関する研究会(第3回)-配付資料
  25. 「地熱発電、補助引き上げ 経産省、3分の1程度に」『日経新聞』2009年3月24日朝刊

関連項目[]

  • 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法 - RPS制度について
  • 固定価格買い取り制度

テンプレート:発電の種類

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