大陸移動説(たいりくいどうせつ、英:continental drift theory, theory of continental drift)は、大陸は地球表面上を移動してその位置や形状を変えるという学説。大陸漂移説ともいい、ドイツの気象学者アルフレート・ヴェーゲナーが提唱した。現在では、プレートテクトニクス説のなかに組み入れられている。
概要[]
1912年にヴェーゲナーは、その著書『大陸と海洋の起源』の中で、地質・古生物・古気候などの資料を元にして、太古の時代には大西洋の一方の大陸が別々に漂流していたとする「大陸移動説」を主張した。
1915年に彼は、かつて「パンゲア」という巨大な陸塊(超大陸)が存在し、約2億年前に分裂して別々に漂流し、現在の位置・形状に至ったと発表した。当時の多くの地質学者は、この説には科学的根拠が薄いとして認めようとはしなかった。
ヴェーゲナー死後の1950年代に、古地磁気・海底などの研究によって大陸移動説は再評価・実証されていき、その後のプレートテクトニクス理論へと発展した。ただしヴェーゲナーの説は、海底面を構成する地質の上を大陸が滑り動くとするものであり、海底面全体がその表面に露出する大陸を伴って動くとするプレートテクトニクス理論とは若干意味合いを異にする。
ヴェーゲナーの主張[]
大陸移動説の評価[]
当時、大陸移動説は一部の学者を除き、多くの地球物理学者・地質学者に批判されていた。1920年代には大陸移動説に関するシンポジウムが開かれ、ヴェーゲナーの著書が各国で出版されていたが、1930年のヴェーゲナーの死後、大半の科学者たちは大陸移動説をまじめに取り上げなくなり、数年後にはナチス政権が誕生してドイツの科学界も変貌していった。
現代から見ると不自然な陸橋説より、よっぽど説明力があるように思える大陸移動説が受け入れられなかった理由の一つに、大陸を動かす原動力の説明ができなかったことがよく取り上げられる。しかし最も重要な問題は、当時の物理学では大陸が動くことを直接的に証明する方法がなかった点にある。地形、地質・古生物・古気候の数々の資料をヴェーゲナーは証拠として提示したが、いずれも状況証拠に過ぎず、当時の一般概念を覆すほどの証拠とは成りえなかった。実際、ヴェーゲナー自身も『大陸と海洋の起源』の中で「測地学的議論」の章を設け、「現在の大陸の位置変化を実測する定量的証明こそ大部分の研究者が最も厳密で信頼できる大陸移動説の検証である」と述べている。
なお大陸移動の実測は20世紀後半に衛星を用いた測量技術が発展してから可能になり、多くの大陸が年数センチという速度で移動していることが明らかになった。
関連項目[]
- アルフレート・ヴェーゲナー 『大陸と海洋の起源』
- 地球科学 - 地球物理学
- マントル対流説
- 海洋底拡大説
- プレートテクトニクス
- 地磁気
- 陸橋説
- 『日本沈没』(大陸移動説が基となっている)
参考文献[]
- 上田誠也 『新しい地球観』 岩波書店〈岩波新書〉、1971、ISBN 4-00-416016-2。
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