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ファイル:Robot Arm Over Earth with Sunburst.jpg

宇宙から撮影した可視光部分の太陽放射(PD NASA)

ファイル:The Sun.jpg

地上から撮影した可視光部分の太陽放射

太陽放射(たいようほうしゃ)とは、太陽が出す放射エネルギーのこと。日射とも呼ばれる。特に電磁気的なもののことを指すことが多い。太陽放射のスペクトルから、太陽の黒体放射温度は約5800 Kと見積もられる。太陽放射の約半分は電磁スペクトルでいう可視光線であり、残り半分は赤外線紫外線が占める[1]とも呼ばれるこれら3つの電磁波が太陽放射の大部分を占めるため、太陽放射により放出される電磁波のことを太陽光とも言う。

太陽放射は主に、日射計日照計で観測・測定される。

太陽放射のメカニズム[]

太陽から電磁波が放射される仕組みは以下のとおりである。

  1. 太陽中心部で水素核融合がおこり、ガンマ線が発生する。
  2. 太陽中心部では1500万Kという高温のために電子陽子が固定されずに飛び交っており、これらがガンマ線の直進を阻害するため外に放射されない。
  3. 直進を阻害されたガンマ線は近くのガスに吸収されてエックス線として放出されるが、エックス線も電子や陽子に直進を阻害される。
  4. 再びガスに吸収され放出される事を繰り返し、だんだんと波長が長い電磁波に変わっていく。紫外線や、それより波長が長い可視光線赤外線に変わると、外側部(光球)に到達できるようになり太陽光として放たれる。

太陽放射の組成[]

ファイル:MODIS ATM solar irradiance.jpg

地表面と地球大気表面における太陽放射スペクトルの比較

太陽放射のうち、ほぼ全てを光が占めるが、そのほかの放射も微量ある。前述のとおり、核融合によって発生したガンマ線・エックス線はほとんどが外に放射されず波長が伸びていくが、ごく微量は外側部に到達し、放射されている。また、核融合や太陽フレアなどによって粒子粒子線も発生し、放射されている。

太陽放射の組成(太陽からの放出時)
  • ガンマ線 - ごく微量
  • エックス線 - ごく微量
  • 紫外線(~0.4μm) - 約7%
  • 可視光線(0.4μm~0.7μm) - 約47%
  • 赤外線(0.7μm~100μm) - 約46%
  • 電波(100μm~) - ごく微量
  • ニュートリノ - 核融合によって発生するニュートリノは、電子や陽子などに直進を阻害されないため、ほぼ全て外に放射されており、地球にも到達している。
  • このほか、アルファ線ベータ線電子ヘリウム原子核陽子などが太陽フレアなどによって発生する。

ただし、地表に到達する太陽放射は、大気の成分による吸収により組成が少し変わり、紫外線が減少するなどする。

太陽定数[]

ファイル:Solar.Constant.Variations.1978-2003.jpg

1978年から2003年の間の太陽定数の変化

詳しくは太陽定数を参照。

太陽定数とは、地球の大気表面に垂直に入射する単位面積当たりの太陽放射の量である。これは可視光線だけではなく、あらゆる波長電磁波を全て含めた値である。人工衛星の測定によれば、太陽定数は1平方メートルあたり約1366Wである[1] 。この値は、数年~数十年の長期的な周期で多少変動しているほか、約27日周期の太陽黒点の活動によっても変化する。この変化は、長期的な地球の気候変動に影響を与えていると考えられている。

太陽から見た地球の角直径は1/11,000ラジアンなので、立体角は1/140,000,000ステラジアンとなる。このことから、太陽が放出しているエネルギーの総量は約3.86 × 1026Wと見積もることができる[2]

太陽放射と地球の気候[]

太陽薄暮化および日照も参照。
ファイル:Solar irradiance spectrum 1992.gif

地球の大気表面における太陽放射のスペクトル

太陽が地平線よりも上にあるとき(日中)、太陽放射は日照や日射として地表に届く。太陽放射のほとんどは太陽から直接地球に降り注ぐため、太陽高度が地表に届く太陽放射の量を左右する。そのため、時間季節緯度によってその量は異なる。また、エアロゾル大気の成分などは、太陽放射を反射・吸収するほか、散乱によっても量が変わる。このうち残った太陽放射が地表面や地表面にある物体、生物などに降り注ぐことになる。地表への太陽放射の増加と気温の上昇には関連があるものの、最高気温が正午を過ぎた午後を中心に観測されるなど、その他さまざまな要因によって左右される。

地球へ届く太陽放射の量は、太陽と地球との距離の二乗に反比例し、この距離が遠くなるほど太陽放射の量は少なくなる。地球の軌道赤道傾斜角は時間とともに少しずつ変化しており、変化の幅は軌道においては5%程度、赤道傾斜角においては2.4度程度ある。これらの変化に伴い、数万年~数百万年の複雑な周期で、地球への太陽放射も440W/m2~540W/m2(北緯65度における値)と大きく変化している。(ミランコビッチ・サイクル参照)

地球に届いた太陽放射のうち、約65%がとなり、地球の気候に大きな影響を及ぼしている。(地球のエネルギー収支参照)

関連項目[]

  • 太陽光 : 太陽放射を視覚的に捉えた表現。特に太陽から出る光(紫外線・可視光線・赤外線)のことを指す。
  • 太陽熱 : 太陽放射によって発生する熱。
  • 太陽ニュートリノ問題 : 太陽から放出されるニュートリノの観測値に関する問題。
  • 太陽変動 : 太陽活動の周期的変化。
  • 太陽風 : 太陽から放出される粒子
    • コロナ質量放出現象 : 太陽から電子・陽子が大量に放出される現象。
    • オーロラ : 太陽から放出される電子が地球の大気に入って起こる現象。
    • 太陽フレア : 太陽の表面で起こる爆発。
    • 太陽陽子現象 : 太陽から放出される陽子が地球の大気に入って起こる現象。
    • 日射計 : 太陽放射を観測する計器。
  • フラウンホーファー線 : 太陽放射のうち、可視光のスペクトルのこと。

出典・外部リンク[]

出典[]

  • Solar radiation basics University of Oregon Solar Radiation Monitoring Laboratory, Last revised: March 16, 2002

外部リンク[]