岩盤浴(がんばんよく)とは、温めた天然石や岩石を加工したベッドの上で横になって汗をかくサウナ形式の風呂の一種で、「お湯の要らないお風呂」などとも呼ばれている。天然の浴場では、日本・秋田県の玉川温泉などがある。
概説[]
床に敷き詰めた天然石を、温水もしくは電熱により加熱し、発生する遠赤外線を利用した温熱施設である。公衆浴場法では、「その他の公衆浴場」に分類される。利用者は、作務衣等の浴衣を身につけ、バスタオル等を床に敷いて、その上に横たわる。床面からの輻射熱と、浴室を満たす水蒸気中の遠赤外線熱エネルギーによって全身くまなく温め、おびただしい発汗をもたらす。浴室の温度が40℃前後と低温で過ごし易く、女性や高齢者が無理なく利用できることから、支持者を増やしていった。
2001年6月、宮城県気仙沼市に登場して以降、岩手県、北海道、そして、当初使用した石が宮崎県高千穂産であったことから、九州各地へと広がりをみせた。その後、地方で発生したブームが大都市へと波及する特異なかたちで、東京、大阪、名古屋などで大小入り乱れて、岩盤浴専門店が乱立するようになった。公衆浴場の経営が未経験の業者がほとんどで、中には保健所の許可を取得せぬまま開業している店舗も見うけられた。
ブームがピークに達した2006年9月、小学館発行の週刊誌「週刊ポスト」が、岩盤浴室の衛生問題を告発する記事を3週連続で掲載(雑菌問題を参照)し、岩盤浴事業者に深刻な打撃を与えた。その後、記事の影響と、岩盤浴専門という単一性が利用者のニーズを満たさなくなるなど、小規模の岩盤浴専門店の魅力は急速に失われていき、多くの店舗が撤退や閉店を余儀なくされた。2010年1月現在、東京都内では大手企業が運営する岩盤浴店の数は著しく減少している。その一方で、スーパー銭湯に併設されるケースが増えている。
導入事例[]
- 普及の始まった当初は女性専用を中心とした岩盤浴専門店が全国各地で急速に出店され、ピーク時は2000店近く増えた。
- 現在、岩盤浴専門店は減り、大型施設のなかの人気コンテンツとして定着。ミストサウナや塩サウナなど低温サウナの一つとして位置づけられる。特にフィットネスクラブや温浴施設、ホテルやエステなどデイスパと呼ばれる日帰り利用可能、都度払い可能な施設に取り込まれ、導入されている。
入浴方法[]
- 大量の汗をかくので、事前に水分補給をしっかり行う。循環器系統に障害を持つ場合には、入浴はあらかじめ医師に相談するか避けた方がよい。
- 40度程度に熱せられた岩盤の上にシーツやタオル、ゴザなどを敷いて20~30分寝ころぶ。ガウンの貸し出しなどを行う施設もある。
- 入浴後は、水分補給をしっかり行い、ショックを避けるために体温の急激な変化を避ける(水風呂などに入らないようにするため、そのままの帰宅を勧める施設もある)。
効果[]
- 発汗作用により新陳代謝の活発化が図れる。具体的な薬事効能を示す施設もあるが、薬事法に触れる恐れがあり、また擬似科学的な効果を掲げるケースも多々見受けられるので注意が必要である。
- 人工的な岩盤浴では、遠赤外線に関連する特殊な岩石の使用を謳う施設も多く、遠赤外線はどのような岩石であれ熱すれば必ず放射するが、岩石によって遠赤外線の放射率と放射量に差があり、鉱石の違いを謳う施設の主張にも科学的な検討の価値がある。(放射線を発する特殊な岩石については、北投石を参照のこと)。
- 岩盤浴が糖尿病などの生活習慣病の症状改善に効果が高いことを、岡山大学大学院保健学研究科の上者(じょうじゃ)郁夫教授の研究グループが明らかにした[1]。熱刺激で誘導された熱ショックタンパク質(HSP)が好作用を及ぼした影響を挙げ、体が温まって血流が促進され、代謝が亢進したことが大きいと分析している。
雑菌問題[]
2006年9月、週刊誌上において岩盤浴床面から一般細菌や真菌が検出されたと報告され、岩盤浴室の衛生問題が論議を呼んだ。
しかし、記事執筆時点で、問題となる病原菌の検査は実施されておらず、しかも誌上で報告された一般細菌や真菌の検出値は、塩素処理後乾燥というハイレベルの殺菌処理を施した場合の数値に匹敵するものであった[2]。これは、岩盤浴床面が乾燥しているため雑菌が増殖しにくい環境であった事を示している。なお、公衆浴場法においては一般細菌や真菌の衛生基準値なるものは定められておらず、検出された数値がいかなるものであれ、衛生、不衛生の評価は不可能である。
急速に拡大する岩盤浴の衛生問題に警鐘を鳴らす目的で書かれた記事ではあろうが、その内容は信頼性のある裏づけを欠いたずさんな調査に基づいており、ややもすれば捏造・中傷記事ともとれるものであったといえる。
脚注[]
関連項目[]
- YOSA
- 浴室床暖房