新燃岳 | |
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新燃岳 | |
標高 | 1,420.77[1]m |
所在地 | 日本(鹿児島県) |
位置 |
北緯31度54分34秒 東経130度53分11秒 |
山系 | 霧島山 |
種類 | 成層火山 |
初登頂 | - |
新燃岳(しんもえだけ)は、九州南部の霧島山中央部に位置し、有史以降も噴火を繰り返している標高1,421mの活火山である。三等三角点は山頂のカルデラ縁にあり、噴火口およびカルデラは鹿児島県霧島市に所在する[1]。尾根筋は宮崎県小林市にまたがる。
山容[]
霧島山最高峰である韓国岳と霧島山東部に聳える霊峰高千穂峰の中間付近に位置し、獅子戸岳と中岳の間に割り込むようにして聳えるなだらかな円錐状の火山であり、山頂に直径750メートルの円形火口を擁する。火口の底には平成噴火前まで直径150メートル、水深30メートルの青緑色を呈する山頂火口湖(新燃池)が存在していた。火口壁の南側に2つの岩峰が屹立しており、「兎の耳」と呼ばれている。山域は1934年(昭和9年)3月16日に、霧島屋久国立公園の特別保護区域に指定されている[2]。
高千穂河原から中岳を経由した登山道が整備されているが、火山活動によってしばしば登山禁止の措置がとられる。山頂付近の植生はススキを中心とした草原となっており、所々に低木のミヤマキリシマ群生地が散在する。
新燃岳は映画『007は二度死ぬ』の舞台にもなった[3]。
地質は輝石安山岩からなる基盤山体の上に火砕丘が重なった構造となっている。
噴火史[]
新燃岳は霧島火山群の中でも新しい部類である新期霧島火山に属し、その山体は2万5000年前から1万5000年前の間に形成されている。火山活動は数千年間にわたって休止していたが、江戸時代に再開した。1637年(寛永14年)から1638年(寛永15年)にかけて断続的に噴火が起き、野や寺院を燃やしたという記述もあるが、新燃岳周辺の地層に該当する噴出物が見られないことから、御鉢(高千穂峰の側火山)の噴火が誤って記録されたものと考えられている[4]。
享保噴火[]
1716年3月11日(正徳6年2月18日)、大音響とともに水蒸気爆発が発生し、黒煙が巻き上がった。新燃岳東方を流れる高崎川では泥流が発生している。一連の噴火活動は断続的に約1年半続き、八丈島での降灰が観測された[5]。
同年11月9日(享保元年9月26日)夜半から再び噴火が始まった。周囲に数ヶ所の火口が形成され火砕流が発生し、付近の山林に火災が広がった。負傷者は31名、焼死した牛馬は405頭にのぼった。神社仏閣など600軒が焼失し、石高で6万6000石の農業被害が報告されている[6]。 北へ約100km離れた宮崎県高千穂町でも、「霧島だけ」の火が見えたとある。(『矢津田家文書』)[7]
1717年2月7日から10日(享保元年12月26日から29日)にかけて噴火を繰り返し、霧島山東側の広範囲にわたって火山灰が降下した。2月13日(享保2年1月3日)朝9時頃、火砕流の発生を伴う大規模な噴火があり、死者1名、負傷者30名、焼死した牛馬420頭の被害があり、神社仏閣や農家など134棟が焼失した。周囲の田畑は厚さ10 - 20センチメートルの火山灰に覆われ、農業被害は3万7000石にのぼった[6]。2月17日から21日(1月7日から11日)にかけても断続的に噴火している。
同年9月19日(8月15日)、享保噴火の中で最大規模の噴火が発生した。高温の噴石を噴出し、火山灰が広範囲に降り積もった。住民の間に流言飛語が広がったため、当時の薩摩藩主・島津吉貴は怪異説・神火説を唱えることや祈祷などを禁じる触れを出した[6]。1717年、噴火がおわる。
享保噴火の際に火砕流に包まれ炭化した樹木が山中に残されている。
総噴出量は1億立方メートルとされる[8]。
明和噴火[]
1771年(明和8年)から翌年にかけて噴火活動があった。水蒸気爆発に始まり、溶岩の流出、火砕流の流下、火山灰の噴出などがあった。
文政噴火[]
1822年1月12日(文政4年12月20日)朝、山頂付近に白煙が観察され、夕方に水蒸気爆発を伴って噴火した。14日(22日)には南方を流れる天降川で泥流が発生している。8合目付近に新しい火口が形成され、軽石や火砕流の噴出を伴う噴火が繰り返された。
昭和噴火[]
1959年(昭和34年)2月13日に小規模な爆発があった。2月17日14時50分に空振を伴って噴火が始まり、黒色の噴煙が上空4000メートルに達した。その後数日間にわたって噴火を繰り返した後、次第に終息していった。噴出物総量は数十万トンにのぼり[9]、周辺の農作物や山頂付近のミヤマキリシマ群落に大きな被害を与えた。
平成噴火[]
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- 1991年(平成3年)
- 11月13日
山の直下で地震が急増し、26日までに小さな揺れが多発した。1991年12月から翌年2月にかけて火山灰の噴出を伴う小規模な噴火が発生。このため、1991年11月26日から2004年(平成16年)1月30日まで登山禁止の措置がとられた。その後2008年(平成20年)8月22日にも再び噴火している。
- 2009年(平成21年)
- 4月下旬頃より新燃池の色がエメラルドグリーンから茶色に変色し、7月初旬頃に再び元のエメラルドグリーンに戻る現象が見られた。
- 2010年(平成22年)
- 3月30日に小規模な噴火が確認され、その後、断続的な火山性地震及び火山性微動と、5月から7月にかけ火口外へ影響を及ぼさない小規模な噴火活動が観測された。
- 2011年(平成23年)
- 1月19日
空振を伴った噴火があり、1月22日、1月26日と短い間隔で噴火、26日15時40分には火口から1500メートル上空まで噴煙が上がるのが確認された[10]。 - 1月27日
15時41分には52年ぶりとなる爆発的噴火があり[11]、火口から2500メートル上空の高さまで噴煙が上がり[12][13]、火口から北西以外のほぼ全方向へ約1.5kmにわたる火砕流の跡も確認された。噴火警戒レベルはレベル2から、新燃岳において導入以来初めてのレベル3へと引き上げられた。火口付近では火山雷なども起きた。1月28日の午前中に東京大学地震研究所による観測が上空からなされ、火口内では火口湖が消失し、直径数十メートル程度の溶岩ドームが出現したと発表された。宮崎市や都城市に火山灰が降り積もった[14]。国土地理院は新燃岳は火口の真下の深さ約3キロメートルと、火口からの西北西に約10キロメートル離れた深さ約6キロメートルの2ヶ所にマグマが貯留していることを報告した。火口の真下には東京ドームの0.8杯分にあたる約100万立方メートルのマグマが、西北西には約600万立方メートルのマグマが溜まっていると推定され[15][16]、今回の噴火によって膨張傾向にあった新燃岳の体積が縮小したことも判明した[16]。 - 1月30日
火口内の溶岩ドームが直径500メートルにまで成長し、中心部の高さは火口縁付近に達していることが確認された[17][18]。宮崎県高原町は30日深夜、「火山が非常に危険な状態にある」として火口の東側にある町内の512世帯約1150人に避難勧告を出した。火口から2キロメートル以内の入山規制が3キロメートル以内に拡大された[19][20]。この噴火によって火口内に出現した直径500メートルの溶岩ドームにより、観光地として有名だった新燃池は消滅した。 - 2月1日7時54分
4回目の爆発的噴火が起こり、火口の南西3.2キロメートル地点で458.4Paの空振を記録した[21]。空振により100枚以上のガラスが割れ、火口から6キロメートル離れた霧島市牧園町の霧島温泉クリニックでは負傷者が出る被害があった。また、九州地方各地をはじめ四国地方の愛媛県や高知県でも家屋の振動が報告され[22]、関東の千葉県でも圧力変化として観測された[23]。火口から南西約3.2キロメートルの地点に70×50センチメートルの大きさの火山弾と、直径6m×深さ2.5メートルの広さの穴が見つかった[21]。そのため、入山規制が4キロメートル以内に拡大された[24]。火山灰や噴石の噴出量は26日の噴火から2日間だけで約7000万トンと推計される[25]。4回目の爆発的噴火の後に溶岩ドームの直径がさらに拡大し600mとなった事が判明した。溶岩ドームが火口に蓋をする形となったため、内部の圧力が高まり、溶岩ドームの頂上を吹き飛ばず形で爆発的噴火の間隔が狭まった[26]が、2月になると爆発の頻度は減少に転じ、マグマの噴出も鈍化した。 - 2月14日午前5時7分
山体の収縮の速度は31日から鈍化していた[27]が、通算11回目の爆発的噴火が起き、火口から10km離れた小林市細野で1-3cmの噴石が約80件降った。火口から北東に16kmの所でも駐車中の車のサンルーフが割れた。3.2kmの空振計は332.1Paを記録した。9kmの宮崎道霧島SAで停車中の車の窓ガラスが割れた[28][29]。
噴火の影響[]
1月19日以降の噴火により噴出した火山灰は新燃岳の東側にあたる都城盆地、宮崎平野南部、鰐塚山地などに広がり、遠隔地の日南市にまで降灰が及んだ。このため火口に近い高原町、都城市および霧島市を中心として多くの被害が発生している。特に1月26日夜から1月29日にかけては継続的に降灰があり、交通機関においては鉄道の運転見合わせ、高速道路の通行止め、空港の一時閉鎖などがあった[30][31]。道路に溜まった火山灰を除去するため、鹿児島市から路面清掃車と散水車が都城市と日南市へ派遣されている[32]。また、小中学校の休校や[33]、観光施設の一時閉鎖などの影響もあった[34]。高原町、都城市および霧島市では住民の避難も行われた[35][36]。農業においては農作物の生育不良や汚損などの被害があり[37]、宮崎銀行や宮崎太陽銀行は、被害を受けた個人事業主や農家に対応する融資を提供している[38]。韓国岳や大幡池から中岳までは入山規制、高千穂峰も周辺道路の交通規制により登山できなくなっている。Jリーグの川崎フロンターレ、東京ヴェルディ1969、アビスパ福岡、横浜F・マリノスなどの多くのクラブは、宮崎県内でのキャンプを中止あるいは中断している[39][40]。
防災[]
新燃岳は現在も活発な活動を続けており、状況の変化に応じた噴火警戒レベルが設定されている。最新の警戒レベルについては気象庁のウェブサイトで確認することができる。霧島山の山々は「霧島山(新燃岳)」と「霧島山(御鉢)」の2つがそれぞれ警戒対象に指定されている。
地方自治体も防災に関する情報を提供している。
- 霧島火山防災マップ (PDF)
- 鹿児島県
- 霧島市
- 都城市
- 宮崎県
観測体制[]
鹿児島地方気象台及び東京大学地震研究所により常時観測がなされており、鹿児島地方気象台は新燃岳の南西約1.7キロメートルの観測点に地震計を、北東の観測点に傾斜計や火口カメラを設置しているほか、噴気ガスの観測を定期的に行っている[41]。東京大学地震研究所霧島火山観測所は地震計、磁力計、GPS基地など20数ヶ所の観測点を配置し、観測を行なっている。
地理[]
周辺の火山[]
霧島火山群のほぼ中央に位置し、北西に獅子戸岳(1,429m)、南東に中岳(1,332m)が連なる。北北西約3.7kmには火口湖の大浪池、北東約2.8kmには大幡池がある。
山容 | 名称 | 標高 (m) |
三角点 等級 |
新燃岳からの 方角と距離(km) |
備考 |
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ファイル:Mount Aso from Mount Naka 1991-03-07.jpg | 阿蘇山 | 1,592.26 | 三等 | 北西 110.0 | 世界最大級のカルデラ 日本百名山 |
ファイル:Kirishima Karakunidake 2.jpg | 韓国岳 | 1,700.06 | 一等 | 北西 3.6 | 霧島山の最高峰 日本百名山 |
ファイル:Kirishima Shin-moedake.jpg | 新燃岳 | 1,420.77 | 三等[1] | 0 | 三角点の点名は「新燃」[1] |
ファイル:Kirishima Takachihonomine 2.jpg | 高千穂峰 | 1,573.36 | 二等 | 南東 4.0 | 成層火山 日本二百名山 |
ファイル:Sakurajima at Sunset.jpg | 桜島 | 1,117 | (二等) 1,109.78 |
南西 40.8 | 北岳が最高点 日本二百名山 |
源流の河川[]
- 霧島川 (天降川の支流)
- 高崎川 (大淀川の支流)
脚注[]
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 基準点成果等閲覧サービス 国土地理院、2011年2月4日閲覧。
- ↑ 霧島屋久国立公園・霧島地域の区域図 (PDF) 環境省、2011年2月5日閲覧。
- ↑ CNNによる報道。
- ↑ 「霧島火山群新燃岳の最近300年間の噴火活動」
- ↑ 霧島火山の活動史 - 歴史時代の噴火 産業技術総合研究所
- ↑ 6.0 6.1 6.2 『霧島町郷土誌』 pp.21-25
- ↑ 新燃岳「享保噴火」伝える古文書、見つかる - asahi.com:マイタウン宮崎 2011年02月13日
- ↑ 毎日新聞:新燃岳噴火 大量マグマ、長期化必至…東大など調査報告:2011年1月30日(日)20時25分
- ↑ 松本達郎ほか 『日本地方地質誌 九州地方』 朝倉書店、1973年
- ↑ “霧島山の新燃岳で噴火、警戒レベル引き上げ”. 日本テレビ (NEWS24).(2011年1月26日) 2011年2月9日閲覧。
- ↑ 2011年1月28日付 読売新聞 朝刊39面
- ↑ 霧島山(新燃岳)の火山活動解説資料 (PDF) - 気象庁・福岡管区気象台・鹿児島地方気象台 1月27日20時00分発表
- ↑ “霧島山の新燃岳が爆発、噴煙2500m超に”. 日本テレビ (NEWS24).(2011年1月27日) 2011年1月27日閲覧。
- ↑ 霧島山(新燃岳)の火山活動解説資料 (PDF) - 気象庁・福岡管区気象台・鹿児島地方気象台 1月28日20時00分発表
- ↑ 新燃岳に東京ドーム6杯分のマグマが蓄積か 日本テレビ 2011年1月28日 23:46
- ↑ 16.0 16.1 2011年1月29日付 読売新聞 朝刊3面
- ↑ 日本気象協会 霧島山(新燃岳)火山情報 2011年1月31日
- ↑ 霧島山(新燃岳)の火山活動解説資料 (PDF) - 気象庁・福岡管区気象台・鹿児島地方気象台 1月31日18時40分発表
- ↑ 霧島山(新燃岳)の噴火警戒レベル3(入山規制)を切り替え (PDF) - 1月31日 気象庁発表
- ↑ <新燃岳噴火>512世帯に避難勧告…宮崎・高原町 毎日新聞 1月31日(月)0時55分配信
- ↑ 21.0 21.1 霧島山(新燃岳)の火山活動解説資料 (PDF) - 気象庁・福岡管区気象台・鹿児島地方気象台 2月1日18時30分発表
- ↑ 毎日新聞:「空振」現象 九州各地で観測:2011年1月29日10時48分
- ↑ 毎日新聞:空振、関東でも観測 千葉で7パスカル:2011年2月4日18時58分
- ↑ 霧島山(新燃岳)の噴火警戒レベル3(入山規制)が継続 (PDF) - 2月1日 気象庁発表
- ↑ 阿部周一 「新燃岳噴火:火山灰の収集いつまで 宮崎・都城など」毎日新聞 2011年2月2日 12時46分
- ↑ 新燃岳:爆発の間隔短く7回目 7日2回目 毎日新聞 2011年2月2日 11時36分
- ↑ 新燃岳噴火:マグマ噴出鈍化、山の収縮が停滞 毎日新聞 2011年2月2日 東京朝刊
- ↑ 新燃岳:11回目の爆発的噴火 毎日新聞 2011年2月14日 11時04分
- ↑ 小林市の噴石被害80件以上 新燃岳の爆発的噴火で
- ↑ 視界不良、交通網に乱れ 新燃岳噴火 宮崎日日新聞 2011年1月27日
- ↑ 交通網に乱れ続く 新燃岳噴火 宮崎日日新聞 2011年1月28日
- ↑ 毎日新聞 2011年1月29日27面
- ↑ 毎日新聞 2011年1月29日1面
- ↑ 宮崎日日新聞 2011年1月29日27面
- ↑ 毎日新聞 2011年1月28日1面
- ↑ 『広報きりしま』 2011年2月8日(号外)
- ↑ 宮崎日日新聞 2011年1月28日1面
- ↑ 宮崎日日新聞 2011年1月29日9面
- ↑ Jリーグ川崎・東京ヴ、宮崎合宿取りやめ 火山灰の影響
- ↑ 横浜M、福岡もキャンプ中止=新燃岳噴火で-Jリーグ
- ↑ 霧島山観測点配置図 気象庁
- ↑ 『霧島・開聞岳(山と高原地図58)』 昭文社、2010年、ISBN 978-439-875738-8
参考文献[]
- 井村隆介、小林哲夫 「霧島火山群新燃岳の最近300年間の噴火活動」 『火山 36巻、2号』 日本火山学会、1991年
- 霧島町郷土誌編集委員会編 『霧島町郷土誌』 霧島町、1992年
関連項目[]
- 霧島山
- 御鉢 - 新燃岳と共に霧島連山で特に活動的な火山
- 霧島屋久国立公園
- 2011年の気象・地象・天象
- 噴火警戒レベル
- タイガーマスク運動
- 007は二度死ぬ(1967年日英合作) - スペクターのロケット工場のある火山島として登場
外部リンク[]
- 基準点成果等閲覧サービス(国土地理院)
- 気象庁霧島山情報ページ
- 2011年1月 新燃岳(霧島火山群)の噴火(東京大学地震研究所)
- 2011年1月 霧島・新燃岳火山情報(ウェザーニュース)
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