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昭和新山
昭和新山(2008年9月)
標高 398m
所在地 北海道有珠郡壮瞥町
位置 北緯42度32分33秒
東経140度51分52秒
種類 溶岩ドーム
ファイル:Showa-shinzan stereo.jpg

昭和新山のステレオ空中写真(1976年)。国土交通省 国土画像情報(カラー空中写真)を元に作成。

昭和新山(しょうわしんざん)とは、北海道有珠郡壮瞥町にある火山支笏洞爺国立公園に含まれる。標高398mで、温度低下と浸食などによって年々縮んでいる。国指定特別天然記念物(1951年指定)。

地質[]

明治新山等と同じく有珠山側火山であり、デイサイト質の粘性の高い溶岩により溶岩円頂丘が形成されている。現在も噴気活動が見られる。

また、かつては有珠山の平地であったところに火山が形成されたことによる、いくつかの特徴がある。山が赤色に見えるのは、かつての土壌が溶岩の熱で焼かれて煉瓦のように固まったものである。そして、川に運ばれ平地の地下に埋まるなどしていた石が、溶岩によって持ち上げられたために、昭和新山の中腹に、河原にあるような丸い石が場違いに転がっているのも見ることができる。

2007年、有珠山とともに日本の地質百選に選定された(「有珠山・昭和新山」)。

噴火前の状況[]

かつてはこの地域は「東九万坪」という広大な畑作地帯で、壮瞥川の川沿いにはフカバという集落があった。この集落名は、かつて鮭鱒の孵化場があったことによる。

胆振縦貫鉄道が通るのどかな田園地帯であったが、火山の隆起とともに集落は消滅した。その痕跡は崩壊した鉄道の橋脚跡などに残っている。

噴火活動の推移[]

  • 1943年12月28日   午後7時、壮瞥町周辺で最初の有感地震。 
  • 1944年1月4日    フカバ集落の湧水の温度が上昇し、20℃だったものが43℃に達する。
  • 1944年1月5日    洞爺湖に巨大な渦巻きが発生。同日、レールの隆起により、胆振線が不通になる。
  • 1944年2月~5月   フカバ集落、柳原集落、東九万坪、西九万坪一体で隆起活動が続く。柳原では前年比で31mも隆起。
  • 1944年6月21日    壮瞥川が、川底の隆起によって氾濫。        
  • 1944年6月23日    午前8時15分、東九万坪大地より第1次大噴火。第1火口形成。
  • 1944年6月27日    午前6時、第2次大噴火。第2火口形成。   
  • 1944年7月2日    午前0時ころ、第3次大噴火。第3火口形成。苫小牧千歳方面でも降灰。
  • 1944年7月3日    午前8時30分、第4次大噴火。室蘭登別方面に降灰。    
  • 1944年7月11日    午前10時40分、第5次大噴火。噴煙が強風に倒され、洞爺湖畔を襲う。
  • 1944年7月13日    午後6時10分、第6次大噴火。第4火口形成。
  • 1944年7月15日     午後9時、第7次大噴火。
  • 1944年7月24日    午前5時、第8次大噴火。
  • 1944年7月25日    午前5時10分、第9次大噴火。
  • 1944年7月29日    午後2時20分、第10次大噴火。登別、白老方面に降灰。亜硫酸ガス噴出で山林が荒廃。
  • 1944年8月1日    午後11時55分、第11次大噴火。室蘭方面に降灰。    
  • 1944年8月4日    午後10時、第12次大噴火。    
  • 1944年8月20日    午前6時、中噴火。第5火口形成。
  • 1944年8月26日    午後2時20分、第13次大噴火。壮瞥町滝之上地区で、睡眠中の幼児1名が火山灰で窒息死。
  • 1944年9月8日    午後4時15分、第14次大噴火。フカバ集落で火山弾による火災。5戸全半焼。
  • 1944年9月16日    中爆発。第6火口形成。
  • 1944年10月1日     午前0時30分、第15次大噴火。第7火口形成。
  • 1944年10月16日   午後7時50分、第16次大噴火。
  • 1944年10月30日   午後9時30分、第17次大噴火。これを最後に、降灰を伴う噴火は収束。
  • 1944年12月      このころ、溶岩ドームの推上が始まる。
  • 1945年1月10日     溶岩ドームの高さ、地表より10~20m。
  • 1945年2月11日    溶岩ドームは高さ40~50mに成長。
  • 1945年2月26日   溶岩ドーム主塔の脇に、副塔が確認される。       
  • 1945年5月      主塔の高さ85mに達する。
  • 1945年9月20日   全活動停止。溶岩ドーム主塔の高さ175m。

噴火観測と保護[]

昭和新山は、1943年12月から1945年9月までの2年間に17回の活発な火山活動を見せた溶岩ドームである。当時は太平洋戦争中であったこともあり、世間の動揺を抑えるために噴火の事実は伏せられ、公的な観測すら行うことができなかった。地元の郵便局長、三松正夫は、その成長の詳細な観察記録を作製した。これは後年、ミマツダイヤグラムと名付けられ、貴重な資料となった。また、三松は世界的にも貴重な火山の徹底的な保護と、家と農場を失った住民の生活の支援のために、民家から山になってしまった土地の買い取りを行った。このため昭和新山は三松家の私有地であり、ニュージーランドのホワイト島等と同じく、世界でも珍しい私有地内にある火山である。1957年には特別天然記念物に指定された。

なお、現在、昭和新山の山麓には、三松正夫記念館が建っている。三松正夫による観測記録などの資料類が展示されている。

アクセス[]

  • 国道453号から北海道道703号洞爺湖公園線を進む。

関連項目[]

  • 三松正夫
  • 有珠山
  • 地質・鉱物天然記念物一覧
  • 日本の地質百選
  • 日本の山一覧
  • パリクティン山 - メキシコにある火山。奇しくも昭和新山と同時期に形成された。畑の地下から噴火した点も共通している。

参考文献[]

  • 三松正夫 『昭和新山 - その誕生と観察の記録』 講談社、1970年。
  • 三松正夫 『昭和新山物語 - 火山と私の一生』 誠文堂新光社〈自然の記録シリーズ 〉、1974年、ISBN 4-416-20010-2
  • 三松三朗 『火山一代 - 昭和新山と三松正夫』 北海道新聞社〈道新選書〉、1990年、ISBN 4-89363-936-6
著者は、三松正夫の後継者で「三松正夫記念館」館長。
  • 新田次郎 『昭和新山』 文藝春秋、1971年/〈文春文庫〉、1977年。
三松正夫をモデルに執筆。『文藝春秋』1969年11月号に掲載。『新田次郎全集 第11巻 ある町の高い煙突・笛師』(新潮社、1975年) に収録。雑誌掲載・単行本の出版年は、この資料の記載による。
  • 手塚治虫 『火の山』 講談社〈手塚治虫漫画全集〉、1983年、ISBN 4-06-173265-X文藝春秋〈文春文庫ビジュアル版〉、1995年、ISBN 4-16-811039-7

外部リンク[]


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