気象学(きしょうがく、meteorology)は、気象に関する学問。すなわち、地球内または惑星内の大気中における個々の流体現象を研究する自然科学の一分野であり、現代では大気科学(atmospheric science)といわれることもある。
気象学の分野[]
気象学には、次のような分野がある。
- 気象力学 - 大気中の様々な力学的現象を流体力学の法則に基づいて研究する
- 大気電気学 - 大気中に起きる様々な電気現象及び光電現象を研究する
- 超高層大気物理学 - 主に熱圏以上の超高層大気におきる様々な物理現象を研究する
- 総観気象学 - 気象観測結果を基に大気現象の構造を解析または予想する
- メソ気象学 - 雷雨や降水セルなどの中規模現象を解析または予想する
- 境界層気象学 - 地上から約 1 km までの大気境界層と呼ばれる領域を研究する
- 航空気象学 - 航空機のより安全な運行のために大気現象を研究する
- 気象化学 - 化学に基づいて大気現象及びその性質を研究する
- 水文気象学 - 大気中の水文学的現象を研究する
- 気候学 - 気象の長期的な変化を研究、分析する
気象現象のスケール[]
一般的に気象現象の規模を分類するときには、オーランスキー(Isidoro Orlanski)が考案したものを一部修正したものを用いることが多い。
スケール名 | 水平規模km(m) | 現象例 | ||
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マクロスケール(大規模) | マクロαスケール | 惑星スケール | 10000km以上 | 超長波、プラネタリー波、巨大高気圧 |
マクロβスケール | 総観スケール | 2000~10000km | 傾圧不安定波、温帯低気圧、高気圧 | |
メソスケール(中規模) | メソαスケール | 1000~2000km | 前線、台風 | |
200~1000km | ||||
メソβスケール | 20~200km | スーパーセル、集中豪雨、海陸風 | ||
メソγスケール | 2~20km | 晴天乱気流、積乱雲、ダウンバースト | ||
マイクロスケール(小規模) | マイクロαスケール | 0.2~2km(200~2000m) | 積乱雲 | |
マイクロβスケール | 0.02~0.2km(20~200m) | 竜巻、塵旋風 | ||
マイクロγスケール | 0.002~0.02km(2~20m) |
日本の気象学の歴史[]
日本には自然観察に基づく経験則によって生み出された農事暦などは存在したが、体系的な気象学が入ってくるのは、江戸時代後期以後である。とはいえ、全くそれ以前に気象学が無かったわけではなく、アリストテレスの気象学は部分的ながら戦国時代に宣教師を通じて流入していた。山鹿素行は風が地表を移動する空気の流れである事には気づいていた。これは西洋で気象学が盛んになる前の発見であったが、彼の関心は軍学の一環としての物であり、独自の学問としては発達しなかった。蘭学の流入以後わずかながら気象の動きに抱く人も出てきて、柳沢信鴻や司馬江漢のように気象の状況について詳細な記録を残す人も登場した。土井利位が自ら顕微鏡で観察した雪の結晶についての研究書である『雪華図説』は良く知られている。
天保年間以後江戸幕府天文方で気象観測が行われるようになり、安政4年には伊藤慎蔵によって本格的な気象書の翻訳である『颶風新話』が刊行された。なお、meteorologyを「気象学」と訳した最初の文献は明治6年の『英和字彙』である。2年後、東京気象台が設置され、明治17年には天気予報が開始、明治20年には中央気象台が発足されるとともに気象台測候所条例が制定され、日本の気象学が本格的に勃興する事になる。
関連項目[]
参考文献[]
- 9-1.スケールの分類 タマの気象学