温泉(おんせん)は、地中から湯が湧き出す現象や湯となっている状態、またはその場所を示す用語である。その湯を用いた入浴施設も一般に温泉と呼ばれる。
熱源で分類すると、火山の地下のマグマを熱源とする火山性温泉と、火山とは無関係の非火山性温泉に分けられる。 含まれる成分により、さまざまな色、匂い、効能の温泉がある。
広義の温泉(法的に定義される温泉):日本の温泉法の定義では、必ずしも水の温度が高くなくても、普通の水とは異なる天然の特殊な水(鉱水)やガスが湧出する場合に温泉とされる(温泉の定義参照)。温泉が本物か否かといわれるのは、温泉法の定義にあてはまる「法的な温泉」であるのかどうかを議論する場合が一般的である(イメージに合う合わないの議論でも用いられる場合がある)。アメリカでは21.1度、ドイツでは20度以上と定められている。
温泉の成り立ち[]
地熱で温められた地下水が自然に湧出するものと、ボーリングによって人工的に湧出あるいは揚湯されるもの(たとえ造成温泉でも)どちらも、温泉法に合致すれば温泉である。温泉を熱源で分類すると、火山の地下のマグマを熱源とする火山性温泉と、火山とは無関係の非火山性温泉に分けられる。非火山性温泉はさらに、地下深くほど温度が高くなる地温勾配に従って高温となったいわゆる深層熱水と、熱源不明のものに分けられる。また特殊な例として、古代に堆積した植物が亜炭に変化する際の熱によって温泉となったモール泉が北海道の十勝川温泉などに存在する。火山性温泉は当然ながら火山の近くにあり、火山ガス起源の成分を含んでいる。深層熱水は平野や盆地の地下深部にあってボーリングによって取り出されることが多く、海水起源の塩分や有機物を含むことがある。非火山性温泉の中には通常の地温勾配では説明できない高温のものがあり(有馬温泉・湯の峰温泉・松之山温泉など)、その熱や成分の起源についていくつかの説が提案されているが、いずれも仮説の段階である。
温泉の歴史と利用[]
日本の温泉[]
日本は火山が多いために火山性の温泉が多く、温泉地にまつわる神話や開湯伝説の類も非常に多い。神話の多くは、温泉の神とされる大国主命と少彦名命にまつわるもので、例えば日本三古湯の一つ道後温泉について『伊予国風土記』逸文には、大国主命が大分の鶴見岳の山麓から湧く「速見の湯」(現在の別府温泉)を海底に管を通して道後温泉へと導き、少彦名命の病を癒したという神話が記載されている。
また、発見の古い温泉ではその利用の歴史もかなり古くから文献に残されている。文献としては『日本書紀』、『続日本紀』、『万葉集』、『拾遺集』などに禊の神事や天皇の温泉行幸などで使用されたとして玉造温泉、有馬温泉、道後温泉、白浜温泉、秋保温泉などの名が残されている。平安時代の『延喜式神名帳』には、温泉の神を祀る温泉神社等の社名が数社記載されている。
六国史に見える温泉の記述
- 日本書紀
- 舒明天皇3年(631年)9月19日:『幸干摂津国有間温泉』
- 同年12月13日:『天皇至自温湯』
- 舒明天皇10年(638年)10月:幸有間温湯宮
- 大化3年(647年)10月11日:天皇幸有間温湯
- 斉明天皇3年(657年)9月:有間皇子性黠 陽狂云々 往牟婁温湯為療病 (和歌山県南紀白浜温泉)
- 斉明天皇4年(658年)10月15日:幸紀温湯 (和歌山県南紀白浜温泉)
- 斉明天皇5年(659年)1月3日:天皇至自紀温湯
- 続日本紀
- 大宝元年(701年)10月8日:車駕至武漏温泉 (和歌山県南紀白浜温泉)
- 続日本後紀
- 日本三代実録
- 貞観2年(860年)2月8日:進肥前国温泉神並従五位上 (長崎県雲仙温泉)
- 貞観5年(863年)10月7日:授下野国従五位上勳五等温泉神従四位下 (栃木県那須湯本温泉)
- 貞観9年(867年)2月26日:大宰府言 従五位上火男神 従五位下火売神 二社在豊後国速見郡鶴見山嶺 山頂有三池 一池泥水色青 一池黒 一池赤 去正月廿日池震動 其聲如雷 俄而如流黄 遍満国内 磐石飛乱 上下無数 石大者方丈 小者如甕 晝黒雲蒸 夜炎火熾 沙泥雪散 積於數里 池中元出温泉 泉水沸騰 自成河流 山脚道路 徃還不通 温泉之水 入於衆流 魚醉死者无万數 其震動之聲經歴三日 (大分県別府温泉)
- 貞観11年(869年)2月28日:進下野国従二位勳四等二荒神階加正二位 授従四位下勳五等温泉神従四位上 (栃木県那須湯本温泉)
- 貞観15年(873年)6月26日:授出羽国正六位上酢川温泉神従五位下 (山形県蔵王温泉)
鎌倉時代以降になると、それまで漠然として信仰の存在となっていた温泉に対し、医学的な活用がウェートを占め、実用的、実益的なものになり、一遍らの僧侶の行う施浴などによって入浴が一般化した。鎌倉中期の別府温泉には大友頼康によって温泉奉行が置かれ、元寇の役の戦傷者が保養に来た記録が残っている。さらに戦国時代の武田信玄や上杉謙信は特に温泉の効能に目を付けていたといわれる。
江戸時代になると貝原益軒、後藤艮山、宇田川榕庵らにより温泉療法に関する著書や温泉図鑑といった案内図が刊行されるなどして、温泉は一般庶民にも親しまれるようになった。この時代は一般庶民が入浴する雑湯と幕吏、代官、藩主が入浴する殿様湯、かぎ湯が区別され、それぞれ「町人湯」「さむらい湯」などと呼ばれていた。各藩では湯役所を作り、湯奉行、湯別当などを置き、湯税を司った。
一般庶民の風習としては正月の湯、寒湯治、花湯治、秋湯治など季節湯治を主とし、比較的決まった温泉地に毎年赴き、疲労回復と健康促進を図った。また、現代も残る「湯治風俗」が生まれたのも江戸時代で、砂湯、打たせ湯、蒸し湯、合せ湯など、いずれもそれぞれの温泉の特性を生かした湯治風俗が生まれた。
そして上総掘りというボーリング技術が19世紀末にかけて爆発的に普及した事で、明治以降には温泉資源を潤沢に利用出来るようになった。日本の温泉源泉総数のうちおよそ1/10を抱える大分県別府市では、1879年(明治12年)頃にこの技術が導入されて温泉掘削が盛んとなり発展した。明治21年には内湯を備える宿はわずか14軒であったが、明治40年代には一気に1,174軒にも急増した。温泉都市となった現在、市内には各町内ごとに住民がお金を出し合って設けた共同温泉が数百あるといわれており、自家源泉を持っている個人宅も少なくない。今では上総掘りから掘削機械に置き換わっているが現在も複数の温泉供給会社が別府温泉を支えている。
温泉と医療[]
明治時代になると温泉の科学的研究も次第に盛んになり、昭和以降は温泉医学及び分析化学の進歩によって温泉のもつ医療効果が実証され、温泉の利用者も広範囲に渡った。豊富な温泉資源に恵まれた別府温泉では、1912年(明治45年)には陸軍病院が、1925年(大正14年)には海軍病院が開院し、1931年(昭和6年)には九州大学の温泉治療学研究所が設置され、また戦後には原子爆弾被爆者別府温泉療養研究所が開設されるなど、温泉治療の研究に取り組まれてきた。
温泉と健康[]
現在では、予防医学などの観点から全国の温泉地でいろいろな取り組みがなされている。温泉と健康について研究されている地域は、岡山県・湯原温泉で病院と温泉宿泊施設と連携した「人間ドック付宿泊プラン」(湯煙ドッグ)などの町ぐるみで温泉を健康増進や療養に積極的に利用している。また温泉の泉質により異なる入浴方法を入浴者にわかりやすく指南できる、市民を育成「温泉指南役」という制度で正しい入浴の仕方を啓蒙している。
欧州の温泉[]
日本の温泉が入浴本位で発展したのに対し、欧州の温泉は飲用を主に、日光浴や空気浴を加えた保養地として発達した。現在でも、鉱泉水を飲んだり、決められた時間だけ湯につかり、シャワーを浴びながらマッサージを受けたりすることは医療行為として認められている。
欧州の温泉地としては、チェコのカルロヴィ・ヴァリ、イギリスの バース、ベルギーのスパ、ハンガリーのブダペスト、ドイツのバーデン・バーデンなどが有名である。詳細は後述の項目を参照。
温泉の利用[]
湯を使う風呂が一般的でなく、衛生に関する知識や医療が不十分であった時代には、温泉は怪我や病気に驚くべき効能があるありがたい聖地であった。各温泉の起源伝説には、鹿や鶴や鷺(サギ)などの動物が傷を癒した伝説や、施浴などを通して入浴を奨励する仏教の影響で弘法大師等高名な僧侶が発見した伝説が多い。このような場所は寺や神社が所有していたり、近隣共同体の共有財産であった。 江戸時代頃になると、農閑期に湯治客が訪れるようになり、それらの湯治客を泊める宿泊施設が温泉宿となった。湯治の形態も長期滞在型から一泊二日の短期型へ変化し、現在の入浴形態に近い形が出来上がった。
温泉はヨーロッパでは医療行為の一環として位置付けられているが、日本では観光を兼ねた娯楽である場合が多い。学校の合宿、修学旅行に取り入れる例も多い。もちろん、湯治に訪れる客も依然として存在する。
提供形態[]
一旦浴槽に注いだ湯を再注入するか否かで循環式と掛け流しに分類される。循環式においては、一度利用した湯を濾過・加熱処理をした上で再注入している。近年掛け流しを好む利用者の嗜好により、源泉100パーセントかけ流し等のキャッチコピーで宣伝しているところもある。
さまざまな湯温[]
各種入浴法[]
- 打たせ湯 - うたせ大浴場(大分県筋湯温泉)、ひょうたん温泉(大分県鉄輪温泉)
- 立ち湯 - 鉛温泉(岩手県)
- 寝湯 - 湯之谷温泉郷
- 足湯 - 各所、屋外で無料のものも多い。道の駅たるみず(鹿児島県)に設置されているものが日本最長。
- 蒸し湯
- 砂湯 - 指宿温泉(鹿児島県)、竹瓦温泉(大分県別府温泉)、別府海浜砂湯(大分県亀川温泉上人ヶ浜)
- 岩盤浴 - 玉川温泉(秋田県)
- 泥湯 - 温泉保養ランド(大分県明礬温泉)、すずめの湯(熊本県地獄温泉)、三朝温泉(鳥取県)、 後生掛温泉(秋田県)
- 飲泉 - 各所、禁忌の場合もあるので、飲む場合は注意が必要。
その他の利用法[]
湯の花の採取[]
- 湯の花小屋 - 別府市の明礬温泉の湯の花(明礬)製造技術は国の重要無形民俗文化財に指定されている。
温泉を食品加工などに利用した例[]
- 地獄蒸し - 別府市の鉄輪温泉が有名。温泉の蒸気熱を利用した地獄釜で魚や野菜を蒸す。成分が逃げないのが特徴。
- 温泉卵 - 高温の源泉につけて卵をゆでる。
- 野沢温泉(長野県)では、収穫後の野沢菜の下ごしらえに利用したり、冬季に凍っている野沢菜をゆでるために温泉を用いている。また下ごしらえの場所として共同浴場の湯船を利用することでも知られている。
- 温泉納豆 - 黒石温泉郷や、四万温泉などで見られる。
温泉泥の利用[]
- ファンゴティカ - 別府では、多彩な泉質の源泉に見られる色とりどりの温泉泥の利用を大分大学医学部、広島大学、日本文理大学、パドバ大学(イタリア)、大分県産業科学技術センターなどが共同で研究して温泉泥美容ファンゴティカが開発されている。
温泉の定義[]
日本では温泉は温泉法と環境省の鉱泉分析法指針で定義されている。
温泉の要素[]
温泉には以下の要素がある。
- 泉温
- 泉温は湧出口(通常は地表)での温泉水の温度とされる。泉温の分類としては鉱泉分析法指針では冷鉱泉・微温泉・温泉・高温泉の4種類に分類される。
- 泉温の分類は、国や分類者により名称や泉温の範囲が異なるため、世界的に統一されているというわけではない。
- 溶解成分(泉質)
- 溶解成分は人為的な規定に基づき分類される。日本では温泉法及び鉱泉分析法指針で規定されている。鉱泉分析法指針では、鉱泉の中でも治療の目的に供しうるものを特に療養泉と定義し、特定された八つの物質について更に規定している。溶解成分の分類は、温泉1kg中の溶存物質量によりなされる。
- 湧出量
- 湧出量は地中から地表へ継続的に取り出される水量であり、動力等の人工的な方法で汲み出された場合も含まれる。
- 温泉の三要素は温泉の特徴を理解するために有益であるが、詳しくは物理的・化学的な性質等に基づいて種々の分類及び規定がなされている。
- 浸透圧
- 鉱泉分析法指針では浸透圧に基づき、温泉1kg中の溶存物質総量ないし氷点によって 低張性・等張性・高張性 という分類も行っている。
温泉法による温泉の定義[]
日本では、1948年(昭和23年)7月10日に温泉法が制定された。この温泉法第2条(定義)によると、温泉とは、以下のうち一つ以上が満たされる「地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)」と定義されている(法的な定義による広義の温泉)。
- 泉源における水温が摂氏25度以上。(摂氏25度未満のものは、冷泉または鉱泉と呼ぶ事がある)
- 以下の成分のうち、いずれか1つ以上のものを含む。(含有量は1kg中)
- 溶存物質(ガス性のものを除く。) 総量1000mg以上
- 遊離炭酸(CO2) 250mg以上
- リチウムイオン(Li+) 1mg以上
- ストロンチウムイオン(Sr++) 10mg以上
- バリウムイオン(Ba++) 5mg以上
- フェロ又はフェリイオン(Fe++,Fe+++) 10mg以上
- 第一マンガンイオン(Mn++) 10mg以上
- 水素イオン(H+) 1mg以上
- 臭素イオン(Br-) 5mg以上
- 沃素イオン(I-) 1mg以上
- フッ素イオン(F-) 2mg以上
- ヒ酸水素イオン(HAsO4--) 1.3mg以上
- メタ亜ひ酸(HAsO2) 1mg以上
- 総硫黄(S)[HS-,S2O3--,H2Sに対応するもの] 1mg以上
- メタホウ酸(HBO2) 5mg以上
- メタけい酸(H2SiO3) 50mg以上
- 重炭酸ソーダ(NaHCO3) 340mg以上
- ラドン(Rn) 20×10-10Ci以上
- ラジウム塩(Raとして) 1億分の1mg以上
鉱泉分析法指針による分類[]
環境省の定める鉱泉分析法指針では「常水」と「鉱水」を区別する。 湧出時の温度が摂氏25度以上であるか、または指定成分が一定の値以上である場合、これを「鉱水」と分類する。(鉱泉参照)
- 泉温
- 鉱泉分析法指針では湧出または採取したときの温度により以下の四種類に分類される。
- 冷鉱泉 - 摂氏25度未満
- 微温泉 - 泉摂氏25度以上摂氏34度未満
- 温泉 - 摂氏34度以上摂氏42度未満(狭義の温泉)
- 高温泉 - 摂氏42度以上
- 液性の分類 - pH値
- 湧出時のpH値による分類
- 酸性 - pH3未満
- 弱酸性 - pH3以上6未満
- 中性 - pH6以上7.5未満
- 弱アルカリ性 - pH7.5以上8.5未満
- アルカリ性 - pH8.5以上
- 浸透圧の分類
- 溶存物質総量および凝固点(氷点)による分類
- 低張性 - 溶存物質総量 8g/kg未満、氷点-0.55℃以上
- 等張性 - 溶存物質総量 8g/kg以上10g/kg未満、氷点-0.55℃未満-0.58℃以上
- 高張性 - 溶存物質総量 10g/kg以上、氷点-0.58℃未満
療養泉[]
鉱泉分析法指針では、治療の目的に供しうる鉱泉を特に療養泉と定義し、特定された八つの物質について更に規定している。
泉源の温度が摂氏25度以上であるか、温泉1kg中に以下のいずれかの成分が規定以上含まれているかすると、鉱泉分析法指針における療養泉を名乗ることができる。
- 溶存物総量(ガス性のものを除く) - 1000mg
- 遊離二酸化炭素 - 1000mg
- Cu2+ - 1mg
- 総鉄イオン(Fe2++Fe3+) - 20mg
- Al3+ - 100mg
- H+ - 1mg
- 総硫黄([HS-,S2O3--,H2Sに対応するもの)- 2mg
- Rd - 111Bq
さらに療養泉は溶存物質の成分と量により以下のように分類される。
- 塩類泉 - 溶存物質量(ガス性物質を除く)1g/kg以上
- 単純温泉 - 溶存物質量(ガス性物質を除く)1g/kg未満かつ湯温が摂氏25度以上
- 特殊成分を含む療養泉 - 特殊成分を一定の値以上に含むもの
資料[]
温泉の種類[]
療養泉はその含有成分によって分類がなされる。またその名称も掲示用泉質名、旧泉質名、新泉質名など3種類存在する。以下は掲示用泉質名の分類である。温泉の種類は泉質についても参照のこと。なお、各泉質に記載の効能はあくまで目安で、効果を万人に保証するものではないことに注意する必要がある。
単純温泉[]
詳細は「単純温泉」を参照
鉱物分・ガス分の含有量が少ない温泉(温泉1kg中に1g未満)。刺激が少なく肌にやさしい。無色透明で無味無臭。
塩類泉[]
溶存物質量(ガス性物質を除く)を1g/kg以上含有しているもの。温度不問。
二酸化炭素泉[]
詳細は「二酸化炭素泉」を参照
温泉水1kg中に遊離炭酸1g以上を含む温泉。
炭酸水素塩泉[]
詳細は「炭酸水素塩泉」を参照
アルカリ性の湯。重曹泉、重炭酸土類泉に分類される。
塩化物泉[]
詳細は「塩化物泉」を参照
温泉水1kg中の含有成分が1g以上あり、陰イオンの主成分が塩素イオンの温泉。
硫酸塩泉[]
詳細は「硫酸塩泉」を参照
硫酸塩が含まれる。苦味のある味。芒硝泉、石膏泉、正苦味泉に分かれる。温泉入浴を禁じられている人以外にはこれといった弊害のない無難な泉質である。
特殊成分を含む療養泉[]
特殊成分を一定の値以上に含むもの。温度は不問。
含鉄泉[]
詳細は「含鉄泉」を参照
温泉水1kg中に総鉄イオンを20mg以上含む温泉。水中の鉄分が空気に触れて酸化するため、茶褐色を呈する。
含アルミニウム泉[]
詳細は「含アルミニウム泉」を参照
アルミニウムを主成分とする温泉。旧泉質名は、明礬泉、緑礬泉など。
含銅-鉄泉[]
詳細は「含銅-鉄泉」を参照
銅及び鉄を含む温泉。水中の金属分が空気に触れる事によって酸化するため、湯の色は黄色である。含鉄泉同様、炭酸水素塩系のものと硫酸塩系のものがある。
硫黄泉[]
詳細は「硫黄泉」を参照
温泉水1kg中に総硫黄を2mg以上含む温泉。白濁して卵の腐ったような臭いがある。
酸性泉[]
詳細は「酸性泉」を参照
多量の水素イオンを含有する温泉。多くの場合、遊離した硫酸・塩酸などの形で含まれる。刺激が強く、殺菌効果が高い。
放射能泉[]
詳細は「放射能泉」を参照
温泉水1kg中にラドンを3ナノキュリー以上含む温泉。これらが放つ放射線は人体に悪影響を及ぼす可能性は小さく、免疫細胞を活性化させるので、むしろ体に良いのではないかと考えられている。
療養泉でない温泉[]
温泉法で定められた温泉の定義には当てはまるが、上記11種の分類に収まらない温泉(鉱泉)も有る。具体的には、湧出温度25℃未満であり、含有成分が1000mg/kg以上含んでいる、またはメタケイ酸・メタほう酸などは規定量以上含んでいるが、療養泉の指定成分を規定量以上含まない温泉である。これらは泉質分類ができず便宜上の通称として“温泉法上の温泉”、“含フッ素泉”、“メタほう酸泉”、“メタケイ酸泉”、“単純泉”、“冷鉱泉”などとその特性に応じて名づけられる。 正式な適応症の掲示はできないが、加温して温浴する場合は一般的適応症と同様の効能が期待できる。
世界の温泉[]
世界的に温泉の利用形態は大きく分けて、入浴して体を休める(日本ではこれが主流)、入浴して療養する、入浴して楽しむ(泳ぐなど)、そして飲む(飲泉)、蒸気を利用する(サウナや蒸し風呂)に大別される。入浴して体を休めるのは湿潤な気候に反映した日本独自の文化(例外的にアジアの一部で日本的な入浴が広まっている)であり、世界的には楽しむ、療養する、あるいは飲むもの、蒸すものとして認識されている。だが、今日の日本文化のブームやonsen文化の浸透(後述)によって、日本式の入浴が世界中で拡がっている部分も見られる。
ヨーロッパと温泉[]
ヨーロッパでは特に「温泉を飲む」、すなわち飲泉が温泉文化として深く根付いており、カルルス温泉の由来にもなった有名なカルルスバードなどは飲泉のための温泉地である。
ヨーロッパでも15世紀までは入浴が主であったが、火山帯が少ないため湯量が少なく、また泉温が低かったため、温泉地は発展しなかった。また、ペストなどの伝染病蔓延や宗教的理由による社会背景などにより、入浴が身体を害するものとみなされ、入浴という習慣が敬遠されていった(詳しくは入浴の項を参照)。一方、ヨーロッパでは飲用水の質が悪く、そのため一部の入浴客は温泉水を飲用していた。これに目を付けた温泉地は瓶詰めにして売り出したところ、大変な評判を呼び、以後は”温泉は飲むもの”、すなわち飲泉が文化として根付いた。有名なエビアンやヴィシーなども温泉水である。なお、日本においてもウィルキンソン・ジンジャーエールなどは初期に炭酸泉水を原料としていた。
またこれにより、温泉水を直に飲用したことで医療効果が鮮明であったことから、飲泉と医学がすぐに結びついた。これは日本の温泉が、流入した西洋医学の崇拝が妨げとなって、しばらく温泉療法が民間療法と見做されて研究が遅れたのとは対称的である(尤も、陸海軍の大規模な傷病者施設のあった別府や、三朝など一部の温泉では温泉病院が設けられたり近隣の大学と結びつき、営々と研究も行われていた)。
今日温泉町として知られるバースやカルルスバードなどは保養地としても発展し、温泉病院や老後施設なども完備する。温泉による保養という点では日本と同じである。また、ホテルやレストランも建てられているが、中に入浴用の温泉は存在せず(ヨーロッパ、特に西欧や東欧は日本ほど湿潤でないことも入浴文化が発展しなかった大きな理由である)、代わりに飲泉場や飲泉バーが設けられている。
対してバーデンバーデンやスパなどのように入浴用として形成された温泉地も少数ながら存在する。しかし、いずれも日本の温泉のように「浸かる」という概念が存在しない。ドイツのバーデンバーデンは温泉としてより、むしろ付随するカジノやブティック、宝石店や高級ホテルなどによるリゾート地として発展した。温泉はサウナやシャワーなどにも利用されるほか、共同浴場が設けられており、温泉水の大浴槽でプール感覚と同様に泳ぐ者も多い(日本ではマナー違反とされる)。また、日本のように裸で入浴するという習慣はなく、水着を着用する。そのために、男湯や女湯と隔てることもない場合が多く、日本の温水プールのような具合で湯に親しむ場所となっている。このような例は後述するニュージーランドの例がある。
また、国際的な温泉地の固定名称にもなったベルギーのスパは療養向けに発展した温泉地である。温泉街の規模が小さく、ホテルの個室内に療養用のバスタブが設けられており、日本の湯治向け温泉に雰囲気が似ている。だが、湯船に入るのは専ら療養目的であるので、日本のように”ゆったり浸って疲れを癒す”という概念は存在しない。
ハンガリーでは古代ローマ時代から公衆浴場が建設され、2000年近くに渡る温泉文化を持っている。ブダペストはチェスができる混浴のセーチェーニ温泉などの温泉が100箇所以上ある。また、温水湖であるヘーヴィーズ湖(en:Lake Hévíz)も存在する。
アメリカ合衆国と温泉[]
アメリカ大陸には日本ほどではないが、一部の火山帯を中心に温泉が点在する。その中で最も有名なのがアーカンソー州にあるホットスプリングスであり、1541年にスペイン人探検家エルナンド・デ・ソトが、原住民が古くから使用していた温泉を発見したのが始まりとされている[1]。ここは湯量が豊富であるが、西欧と同様湿度が低いために基本的に入浴習慣が無かったため、あくまでシャワー、サウナやマッサージとして使用されるにとどまっており、付随するカジノなどのリゾート施設が発展を後押しすることになった。一方、医療とも深く結びつき、戦時中、戦後には傷病者の看護施設も多数設けられた。今日では年間300万人が訪れる全米随一の温泉リゾートとなっている。
その他、カリフォルニア州などの西海岸にも自然の温泉が点在するが、ほとんどが大自然の露天風呂であり、開発はさほど進んでいないのが現状である。
アジア諸国と温泉[]
韓国および北朝鮮では日本に似た“浸かる”温泉文化が根付いており、日韓併合に伴い、日本人が朝鮮半島で温泉開発を行ったことに因るものである。いずれも火山が少ないが、高温が噴出する温泉が多く存在する。しかし、日本とは文化的な相違があり、初めて訪れる日本人はカルチャーショックを受けることがある(たとえば、入浴の際に何も持たない)。また、汗蒸と呼ばれる伝統的な蒸し風呂がある。
台湾における温泉の歴史の始まりは、北投で1894年にドイツ人のウォーリー(Quely)が温泉を発見したことだとされる。1896年には、その北投温泉に大阪出身の平田源吾が「天狗庵」と言う旅館を建設し、周辺にも陸軍の保養所などが建設される。これらは記録に残ったものであるが、温泉の効能が書かれた説明などには、知本温泉のように台湾の先住民が利用したと言う記述や伝聞も残されている。屏東県車城郷の四重渓温泉には、高松宮が夫婦で利用した浴槽が現在でも残されている。日本の統治時代に警察の保養所として建設された温泉旅館が、蒋介石の統治時代は「警光山荘」として台湾の警察に利用され、現在では一般人も利用できるようになっている。台湾の温泉は水着着用で利用するのが一般的だが、日本式の温泉を表す「日式」と書かれた温泉では、日本の温泉のように何も身に着けずに利用することを表す[2]。一部の温泉では温泉卵を茹でる場所も用意されている。
オセアニアと温泉[]
オセアニアで有名な温泉大国はニュージーランドで、国内には火山が多いために、温泉地も数多く存在する。原住民のマオリの人々も温泉の効能を知っており、温泉を療養に用いていたという。しかし、20世紀前半に国を挙げて豊富な温泉水に目を向け、滞在型の温泉リゾートを開発しようとしたが、日本ほど湿潤な気候でないことと、入植した白人には入浴という習慣が根付いていなかったため、さほど進展しなかった。今日、ニュージーランドの温泉はスポーツやエクササイズといった健康面で結びつき、あくまでスポーツやアウトドア後に汗を流すための保養施設として発展している。また、温泉水を利用した温泉プールは非常に人気があり、温泉地の主力施設となっている。
Onsen[]
2003年頃から、「Onsen」を世界で通用する言葉にする運動がある。これは、一般的な英語訳である「Hot Spring」では熱水が湧出する場所、「Spa」では療養温泉という意味があり(元はF1ベルギーGP開催地としても有名なスパ村に由来する)、日本の一般的な温泉のイメージとどちらも離れているからである。「Onsen」を世界で通用する言葉にする運動は、草津温泉などが積極的に行っている。別府市の行政組織には「ONSENツーリズム部」がある。
その為か最近では温泉をメインとし日本を訪れる外国人観光客も増え始め、海外からの温泉旅行専門のツアーや日本の各地の温泉を紹介する英語版のウェブサイトも見られる(下記リンク参考)。
温泉マーク[]
温泉マークは、「♨」。 温泉マークの文字参照による表記方法は、♨(♨)である。
註[]
- ↑ Paige, John C. and Laura Woulliere Harrison. Out of the Vapors: A Social and Architectural History of Bathhouse Row, Hot Springs National Park. p.24. U.S. Department of the Interior. 1987年. (PDFファイル)
- ↑ 日経BP「旅名人ブックス 台湾の温泉&スパ」
関連項目[]
- 温泉街
- 日本の温泉地一覧 - 日本の温泉画像一覧
- 国民保養温泉地
- 国際観光温泉文化都市
- 世界の温泉地一覧 - 台湾の温泉(zh:臺灣温泉)
- 温泉番付
- 地獄 - 地獄釜
- 温泉卵 - 温泉饅頭 - 炭酸せんべい
- 温泉療法 - 水治治療
- 湯あたり
- 浴場、湯治場、公衆浴場
- スパ
- 健康ランド
- スーパー銭湯
- 銭湯
- 温水プール
- 人工温泉
- バーデン - ドイツ語の「風呂」の意。温泉地に多く使われる地名
外部リンク[]
- 温泉 - ウィキトラベル
|
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