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湯前神社(ゆぜんじんじゃ)は、静岡県熱海市に鎮座する神社である。式内社の「久豆弥(くづみ)神社」の論社で、旧社格は村社。社前には走り湯と並び熱海温泉本来の源泉とされる大湯(おおゆ)が湧いている。
祭神[]
少彦名神を祀る。少彦名神は温泉の神として日本各地に祀られているが、本来は大湯そのものを神として祀ったものと思われる[1]。
由緒[]
社伝によると、天平勝宝元年(749年)6月、小児に神託が下り、諸病を除く効果があるので温泉を汲み取って浴せよとの神教があり、その報恩として里人が祠を建てて少彦名神を祀ったのに創まるという[2]。また天平宝字年中(8世紀半ば)に箱根山の金剛王院(廃寺[3])に住した万巻(満願)上人が、熱海の海中に温泉が湧いてその熱湯のために多くの魚介類が死んでいたのを哀れみ、海浜に祈祷の壇を築いて100日間の勤行に励むと、満願の日に内陸部へと湯脈が移ったので、その傍らに「湯前権現」と称して温泉の守護神として祀るようになったともいう[4]。
『伊豆国神階帳』田方郡部に載せる「従四位上 熱海の湯明神」に比定され[5]、『元亨釈書』に釈桓舜が説法をしたと伝える「温泉神祠」も当神社の事と推定されているが[6]、『延喜式神名帳』の「久豆弥(くづみ)神社」に当てる説もある[7]。中世以降広く「湯前権現」と称され、鎌倉時代に源頼朝を初めとする歴代将軍や幕府の要人が走湯、箱根の二所権現に盛んに参詣するようになると、広く湯治の神として喧伝された[6]。
祭祀[]
- 献湯祭(2月10日・10月10日)
- 江戸時代に江戸城へ熱海温泉の湯水を献上した古例に因み、毎春秋2季の例祭に神前に大湯の温泉を献じて浴客の健康を祈るとともに、「湯汲み道中」が再現される。
社殿[]
文化財[]
熱海市指定
- 石鳥居1基(建造物)
- 石燈籠2基(建造物)
- 楠(天然記念物)
脚注[]
- ↑ 『式内社調査報告』。
- ↑ 『特選神名牒』所引「熱海温泉記」。
- ↑ 現神奈川県箱根町にあり、箱根神社の別当寺であった。
- ↑ 寛文7年(1667年)の年紀を持つ「湯前権現拝殿再興勧進帳」(熱海市立図書館所蔵)。
- ↑ 『伊豆国神階帳』は伊豆国の国内神名帳。
- ↑ 6.0 6.1 『静岡県の地名』。
- ↑ 出口延経『神名帳考証』等。久豆弥神社の「くづみ」は伊豆国の古代の郷名である「久寝(くすみ)」に因むものと見るのが通説であるが、その「くすみ」を伊豆国の隅(「国隅(くすみ)」)と解したり(『日本地理志料』)、熱海の温泉湧出を神の業と見、それを「奇霊(くしび)」(奇魂)と称したのが「くすみ」と訛ったと解して(竹村茂正『豆州式社考案』)、久寝郷を熱海市に比定するのがその論拠とされる。もっとも久寝郷は現伊東市市街地一帯を指すとする説が有力なので、久豆弥神社を同市の葛見神社に比定する説もある(『式内社調査報告』)。
参考文献[]
- 教部省撰『特選神名牒』(復刻版)、思文閣出版、昭和47年 ISBN 4-901339-07-9(初版は磯部甲陽堂、大正14年)
- 菱沼勇「久豆彌神社」(『式内社調査報告』第10巻 東海道5、皇學館大學出版部、昭和56年)
- 『静岡県の地名』(日本歴史地名大系22)、平凡社、2000年ISBN 4-582-49022-0
外部リンク[]
- 熱海の温泉について(熱海市観光協会)
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