Gravity Wiki

第二次高調波発生(だいにじこうちょうははっせい、Second harmonic generation, SHG)は、非線形光学現象であり、が非線形光学結晶と相互作用することにより、もとになった光の二倍の周波数の光を発生させる現象のことである。二倍の周波数の光とは、波長が半分の光のことである。

SHGはミシガン大学のフランケン(P.A. Franken)、ヒル(A.E. Hill)、ピータース(C.W. Peters)およびバインライヒ(G. Weinreich)により1961年にはじめて報告された。[1]この実験はレーザー(高強度で単色性の光源)の発明によって可能になった。彼らは、ルビーレーザー(波長694nm)を水晶のサンプルに集光した。その透過光を分光器で分光し、スペクトル写真フィルムにとると、347nmの光が発生していることが示された。有名な逸話だが、彼らが論文をフィジカル・レビューで出版するときに、編集者がミスをして347nmの写真フィルム上のスポットをスペクトルの汚れだと勘違いし、取り除いてしまったということが知られている。

物理的背景[]

光は物質に生じる双極子の振動により発生する。物質に電場Eを与えると電場の大きさによって、次の展開式で現わされるような電気分極Pを持った双極子が発生する。

ここでknはn次の電気感受率である。物質に光を照射すると物質には以下のような電場Eがかかることになる(ここでは、位相はおいておく)

ここで、ωは周波数(∝光のエネルギー)。式(1)の二次の項を考えれば

ここに見られるように、k2 ≠ 0である媒質においてはでは照射した光の2倍の周波数で振動する双極子がE0²に比例した大きさで発生する。つまり、これは、照射した光の2倍の周波数の光が発生することを意味する。 等方性の媒体(例えば気体や対称軸をもつ結晶)では、k2 = 0であるため二次高調波発生はおこらない(ただし、三次高調波発生は起こりうる)。

位相整合[]

強い二次高調波を得るためには入射された光と、発生した二次高調波の位相が媒質中の光路のすべてでそろっていなければならない。このことを位相整合と呼ぶ。位相整合条件は、二つの光の位相速度が一致することであり、その条件は二次高調波の波数k1、入射光の波数k2とすると次のように書かれる。

光の波数kは真空での波長λ0屈折率nを用いればk=2πn0で表される。二次高調波では(1/2)λ2010なので、位相整合条件は屈折率を用いてつぎのようになる。

一般に、媒体の屈折率は波長依存性をもつので、等方的な媒体(たとえば、気体や等方性結晶などの複屈折がおこらない媒体)では二次高調波は発生しない。一方、異方性を持った媒体(光学軸をもった結晶)では複屈折により、媒体内に通常光線 (ordinary ray) と異常光線 (extraordinary ray) の二つの異なる偏光の光が発生する。この二つの光線は異なる屈折率を持つ。入射光の光学軸に対する角を変えることで、二つの波長での屈折率を位相整合条件に一致させることができる。

通常光線と異常光線はそれぞれ屈折率が異なるので真空の波長が同じでも波数が異なる。(2)式を書き直せば、

といった位相整合条件も存在する。同一光線の入射光(つまり同じ偏光)から異なった二次高調波を発せさせるのをTypeIと呼び、異なった光線(すなわち直交する異なる偏光)の入射光から二次高調波を発生させることをType IIと呼ぶ。

脚注[]

  1. Franken P. A., Hill A. E., Peters C.W., and Weinreich G., "Generation of Optical Harmonics", Phys. Rev. Lett. 7, p.p. 118–119 (1961). doi:10.1103/PhysRevLett.7.118

参考文献[]

  • V.G. Dmitriev, G.G. Gurzadyan, D.N. Nikogosyan "Handbook of Nonlinear Optical Crystals" 3rd edition, Springer(1999)